第5話「基地へ」

「使い方分かるかな?」


「格闘ゲームのコンソールみたいだな。原始的だが、一応は習っている」


 そして奏多は遥にこう続ける。


「事故った奴がオペレーションするのは不安だがな」


「不慮の事故だったんだって。決して不注意のせいで事故したわけじゃないよ」


「そういうなら、実力を示すんだな」


「難しいかな。ここは僕にとって未知の世界。どこに何があるのかも分からないよ」


 奏多は一瞬首を傾げた後こういう。


「分かった。とりあえずお前を近くの基地まで送ってやる」


 遥は奏多に近くの軍事基地まで案内される。


「ここが君の基地なの?」


「オペレーターとしての君の役目を見たかったが……」


「質問にそんな答え方はないよ」


 そういわれた奏多ははっとなり、こういう。


「それも済まない。だがここは俺の基地じゃない」


「軍人じゃないの?」


「いい方が悪かったな。俺は民間人だが、機体の試乗もやってるから軍の基地にも入れるんだ」


「民間人がそんな軍事機密みたいなことに関わっていいの?」


 遥は尤もな疑問を奏多に投げかける。


「既に技術も公開されてるような機体を修繕した時、チェックしないといけないからな」


「つまるところお古の機体にわざわざテストパイロットを乗せる意味がないってこと?」


「そういうことだな。だから軍とはコネが効くんだ」


 遥は感心するような口ぶりで奏多にいった。


「凄い人なんだね、奏多は。まるで白馬の王子様みたいだよ」


「君が中身男なことを差し引いても、まんざらじゃないかな」


「で、そのロボットは民生機なんだよな。何で動いているんだ?」


 奏多の質問に遥は答えた。


「電池式だよ。そこにコードのボタンがあるよね?」


「あ、本当だ。でも規格とか大丈夫か?」


 遥は奏多の問いにこう返す。


「シンプルなコネクターに変圧器も付けてるから、何とかなるよ」


「で、他に何か積んでいるのか?」


「そうだね。護身用に武器を積んでいるよ」


 遥は奏多にありのままを話した。


「おいおい、そんなことバラしていいのか?外から見えないってことは」


「そう、仕込んでいるんだ。異世界でいきなり攻撃された時対処できないといけないよね?」


「何故手の内を見せた?隠して置けば恫喝にだって使えただろう」


 遥は疑問に答える。


「君が僕の突拍子もない話を信じてくれたからだよ」


「だが俺はこの世界の最高責任者ってわけでもない、しがないサラリーマンだ」


「技術供与なんて約束できない、ってこと?それはないはずだよ」


 奏多は遥のいわんとしていることを理解した。


「軍とのコネがあるから大丈夫とは行かないって意味でいったんだ」


「いや、昔からある技術なら提供してくれるはずだよ。この世界じゃ珍しくないよね?」


 そう問いかける遥に奏多はこう答える。


「それもそうだが、俺達の側にメリットがない」


「この機体が異世界の存在を証明する、それだけでも充分な材料だと思うけどね?」


 そう返した遥に奏多はこういう。


「確かに異世界転移可能な人型作業機は研究対象として魅力的かもな」


「だよね?」


「だが、お前には何ら後ろ盾がない。俺はやらないが、殺してでも奪い取るなんて容易だ」


 そんな奏多に遥はこう返す。


「その機体は二人乗りだ。どうしてもオペレーターは必要になる」


「なるほど、考えていないようで考えているんだな」



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