第4話「新たなる操縦者」

「まさか書類を疑うわけじゃないよね?」


 そんな遥に奏多はいう。


「まあな。だがこんなのはメルヘンやファンタジーの類だ」


「異世界転移もその類だと思うけどね」


「ともかく、お前たちの世界の事情は分かった。だが女性になった以上、元の世界に戻ってどうこうはできないんじゃないか?」


 そんな奏多に遥は返す。


「この世界に遺伝子レベルの性転換技術はあると思うけど、それは根本的な解決にならないよ」


 すると遥の様子を見た奏多はこんな提案をする。


「それなら、そのロボットと一緒に君を保護しよう」


「でもこのロボットは二人乗りだよ?」


「仲間が死んだっていうのに冷静だな」


 そんな奏多に遥はこう返す。


「だからこそだよ。仲間が死んじゃったなら、なおさら立ち止まるわけにいかない」


「そう簡単に割り切れる神経はよく分からないが……」


 そんな奏多に遥はうつむきながらいった。


「元々失敗したら命にかかわる実験だと心に刻んでいたからね」


 少しは悲しんでいるのか、と思った奏多だったがそれはいえなかった。


 いってしまえば、恐らく遥はこらえきれず泣いてしまうだろうからだ。


「ごめんね、円花」


 そういいつつ遥はミイラをテコの原理でコクピットから放り出した。


 一見冷徹なようだが、女性となった遥にとってミイラとはいえ死体を担ぐのは重労働だったのだ。


 実際、遥はその後近くにあった瓦礫を墓標代わりにしてミイラを丁重に弔った。


 そして、遥は奏多に問う。


「使い方分かるかな?」


「格闘ゲームのコンソールみたいだな。原始的だが、一応は習っている」

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