第3話「世紀の違い」

「どうしたんだ、遥?」


 遥は奏多の言葉で我に返る。


「転移終了時の衝撃で、僕達に何らかの異変が起きたということだね」


「なるほど。で、そいつがもう一人のパイロットなのか」


「甘崎円花。彼女は操縦を担当していたんだ」


 そんな遥に奏多は疑問を呈する。


「君は何をしていたんだ?」


「僕は計器確認……日本語に拘らないならオペレーション担当だった」


「それで事故を起こしたのか」


 奏多の視線が自分に向くのを見て、遥は返す。


「注意してたって事故が起きる時には起きるんだよ」


「確かに、旧世代の技術で異世界転移なんてことをしてんだからな」


 そんな奏多の物言いに遥は抗議の意味を込めて問いかける。


「今は何世紀なの?23世紀とか?」


「西暦に直せば2127年、といえば分かるか?」


 その答えに遥は突っかかる。


「偉そうなこという割に、1世紀しか違わないじゃないか」


「21世紀に入ってから技術は加速度的な進歩を遂げた。100年あればかなり変わるだろ」


 そういわれてしまえば遥はぐうの音も出なかった。


 だが、遥には一つ気になる点があった。


「そういや、君の世界でAIってどうなっているの?」


「2017年となれば、技術的特異点の話題も出てるか。昔の人間はやけに心配症だったんだな」


「まあ君がAIに支配されているなら、とっくの昔に僕は取っ捕まえられてただろうしね」


 そんな遥に、今度は奏多が突っ込む。


「とっくの昔といったって1時間も経ってないだろ」


「言葉の綾だっての」


 そういいつつ、遥は身分証明書を取りだす。


「それより、これ見てくれるかな?」


「浅倉遥……性別『男』だって!?」

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