第303話 頼むお願い誰か止めて!

 幸い部屋の家具もプレゼント類全部も被害は全く無かった。

 奈津希さんも例の現象の範囲はそれなりに絞っていたようだ。


 そしてあのスチームサウナ(帯電付)現象から1時間後。

 ソファーには奈津希さん曰く清涼飲料水の空き瓶。

 そして俺とルイスとよれよれの猛獣様なつきさん


「それでもよお、あいつさあ」


 酔っ払いに付き合う俺とルイス。

 何故こうなった!!!


 まあ全部状況は憶えているけどさ。

 あの後あんなこんなあったけれど、結局奈津希さんは江田先輩との件を洗いざらい喋らされてしまった。

 奈津希さんは残念ながらこっちの面では最強とは程遠かったらしい。


 で奈津希さんがやけ清涼飲料水ジュース(自称)して、俺とルイスがつき合わされた訳だ。

 要領のいい連中はとっくに脱出している。

 風遊美さんは奈津希さんの事を心配してか客間にいるのを確認済みだけれど。


「よーし、それじゃあ風呂でも入って全部さっぱりしようぜ」


 奈津季さん、いきなり脱ぎだす。

 そうとうきこしめしていらっしゃるようだ。


「奈津季さん、ここはリビング。脱いじゃまずいです」

「ん、そうだな」


 一応奈津希さんはそれ以上脱ぐのをやめる。

 既にブラとホットパンツという直視できない格好になっているけれども。


「なら部屋で着替えるぞ!」


 そのまま俺の部屋へ入っていく。

 おい!


「着替えるなら客間の方で着替えて下さい!」

「ええでないかええでないか。何を今更。減るもんじゃないし」


「そういう問題ですか。江田先輩に悪いだろう」

「ヒデアキなら文句言わにゃあよ。なあ修」


 俺は小声でルイスに告げる。


「残念ながら事実だ。一緒に肩組んで皆で入ろうじゃないかガハハハ位言いかねない」


 事実である。


奈津季先輩このひとの相手だけあるな、ある意味流石だ」


 ルイス、かっくりとうなだれる。

 どうも特区内の人間というのは皆そっちの方の危機感が無くて困る。

 そっち系犯罪が極端に少ないせいもあるのだろうが。


 まあ拳銃持ちすら凌駕する攻撃魔法持ちがそこら中にうようよいる場所で、暴力系とか性犯罪系を犯す馬鹿者がそういるとも思えない。

 スーパーのおばちゃんですら炎魔法持ちという場所だし。


 という訳で仕方なく俺とルイスもほぼ強制的に露天風呂へ。

 何せためらっていると奈津希さんに剥かれそうな状態だったのだ。


「ははははは、特区を離れるとこの露天風呂ともしばしお別れとは寂しいぜ」


 奈津季先輩は超御機嫌モードになる。


「ドイツの特区の近くには温泉地もあるみたいですけどね」

「ルーアンからバーデン・バーデンは近くはないわな。詩織みたいな反則魔法つかえりゃ話は別だけどさ」


「そう言えば詩織のプレゼント、あれは一体何なんだ」


 ルイスが俺に尋ねる。

 あの非常用ボタンがついた怪しい装置か。


「俺もわからない。審査魔法でも一部分からない機能がある」

「本人が言うにはまだ受信側が一部未完成なんだそうだ。4月までには完成するから心配ないですよ、って言っていたけどな」


 何なんだろう。怪しい。


「それよりここで肩組むぞ!海外進出への奈津季ちゃんへの応援エールだ!」


 おいおいバカ奈津季先輩それやめろ。いややめて下さい!


「ほれ修とルイスも肩組んで、円陣作るぞ!」


 女性一人と男性2人で全裸で立って円陣を組むとどうなるか。

 見える視界が大変危険な事になる。

 見えては行けない部分が男女ともに丸見え。


 思わず俺は目を瞑る。

 かなりというか、まずいというかやばいというかアウトというか……

 伝わる体温と匂いですらもう、危険領域を突破している。


 おい香緒里ちゃんか風遊美さん、お願いだからこの猛獣なつきさん気絶させて。

 頼むから……


 助けはこない。


「おれ行くぞ!ふれーふれー奈津季、それ!」


 助けが来ない中、俺とルイスのやけくそのエールが響く……

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