第228話 バイキングあるある地獄
午後6時5分前。
ぐったり疲れた俺とルイス君、何故か元気な詩織ちゃんは無事ホテルへ到着した。
「修兄、目が死んでいるけれど何処へ行ってきたんですか」
「バイキング食べて、ホームセンターに行って、帰ってきた」
本当にそれしかしていない。
でも時間的に危険だったし体力的にもぎりぎりだった。
だだをこねる詩織ちゃんを何とかごまかしてやっと帰ってきたのだ。
あの地平線が見えそうなホームセンターに実質4時間は少なすぎた。
「ルイスも何か死んでいるな、大丈夫か」
「大丈夫だ。久しぶりに我を忘れてしまった」
実際、ホームセンター内は楽しかったのだ。
あまりに大きくあまりに何でも売っているので、俺を含めて3人共テンションが上りまくってしまった。
その結果がこれである。
チェックイン手続きは先に着いた香緒里ちゃんがやってくれていた。
なのでそのまま荷物を置きに行き、その脚で再びロビーへ戻る。
夕食は外で食べる予定だからだ。
「今日は焼肉ですよね」
と風遊美さん。
「ええ、日本食は明日の旅館で食べられますから」
島だと普通の肉が少ない。
離島なので大体冷凍肉か加工済みの肉ばかりだ。
なので今日は焼肉バイキングの店を予約していた。
2000円でノンアルコール飲み放題、一部高いお肉以外は寿司も惣菜も食べ放題という庶民的な店である。
「注意事項です。制限時間60分お残し厳禁。取ってくるのは自分で食べる分だけです。絶対元をとろうなんて欲張らないで下さい。いいですね」
特に詩織ちゃんに向けて言っているのだが、聞いているかなあ。
「それでは各自、取りに行きましょう」
全員で立ち上がって取りに行く。
俺は握り寿司5かんとサラダ類少々、それにオレンジジュースを取って真っ先に席に戻った。
待っていると上品に色々少しずつ取った香緒里ちゃんが戻ってくる。
「あれ修兄、それだけで大丈夫ですか」
「絶対食べきれない程取ってくる奴がいるから、それに備えて」
香緒里ちゃんは笑う。
「食べ放題あるあるですよね。家族で行くとたいてい子供が取りすぎて、最後にお父さんがひとりでもくもく食べている光景」
「そうならなければいいんだけどな」
次いで戻ってきたのは風遊美さん。
持ってきた量は良識的だ。
ルイス君が戻ってくる。
彼も良識的。
彼の場合は昼飯のバイキングで飽和攻撃をやって自爆したので、その反省が生きているのだろう。
そしてそろそろ問題児の時間。
詩織ちゃんが戻ってきた。
テーブルの上にてんこ盛り肉、ポテトサラダ山盛り、ジュース3種類を置いてまた行こうとする。
「ちょっと待て、これ食べ切れるのか」
「まだまだ種類があるのですよ。寿司とうどんとカレーが呼んでいるのです」
消えていった。
そして奈津季さんも戻ってくる。
取ってきたのは大量の肉と大量のデザートのみ。
野菜も主食類も一切ないという割り切りが甘党の猛獣に相応しい。
そしてジェニーとソフィー、詩織ちゃんが一緒に帰ってきた。
お盆にこれでもかと並べた大量の皿が見える。
唐揚げカレーうどんとか訳わからないものまで作ってきている。
ああ、俺は取りに行かなくて正解だったな、と心から思った。
「さて、それではみんなで頂きましょう」
そして地獄の蓋が開く……
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