第139話 小話2の6 被疑者確保、追及だ!

「こんな処ですね。あと幽霊は残念ながら私の管轄外です。他に謎はありません」

「でも噂の半分は事実だった訳ですね」

「まあ、オカルトな部分を除けば」

 何せ内部の人間が実際にあるものや出来事を元に噂を作ったのだ。

 元になる事物があるのは当然だ。


「何なら空スパの神像も信者に用意させますよ」

「見えざるピンクのユニコーン像はどうしますか」

「あれは見えないのが教義なので無理ですね」


 最後に倉庫全体の写真とマイクロバスやボートの写真を撮って終了とする。

 なお俺自身の写真も撮られそうになったが辞退させてもらった。

 魂が抜けると困るので。


 結局俺自身の作業が全く出来ないまま、俺は工房を閉めることにした。

 何かやる気がなくなったというのもある。

 あと、マンションに帰ってやることが出来たせいもあった。


 ◇◇◇

 

 マンションに帰ると、ジェニー以外は全員リビングにいた。

 好都合な事に風遊美さんも奈津希さんもいる。

 というかこの2人は春休み中、ほとんどこの部屋に泊まり込んでいるが。

 俺は自室からパソコンを持ち出して液晶テレビに接続。

 あの謎の工房の鳥瞰図を液晶テレビに映した。


「どうした修、お、これはこれは」

 奈津希さんの言葉で液晶テレビ前に皆が集まる。


「なにこれ、あそこの工房ですよね」

「キャプションはともかく、絵は良く描けていますね」

「よく見ると、ほぼあの工房そのままだわ」

 全員の意見が出たところで俺は話す。


「さっき、この噂を元に工房に探検部の取材が来た。一応全部見せてオカルト関係は否定しておいたけどな」


「取材って何だ?」

 奈津希さんが尋ねる。


「探検部に工房を調べてくれという要望が結構来ているんだと。噂の元はテキストベースの掲示板らしいけどな」


「ジェニーですよね」

 香緒里ちゃんがその名前を出した。

 というか皆気づいていただろう。


「という訳でジェニーの部屋へ突入する。けど俺が先だと着替え中とかだと不味いから、先頭お願いしていいかな」


「おっしゃ、面白そうだ」

 奈津希さんが先頭に立って歩き出した。

 そしてジェニーの部屋をノックする。


「ジェニー」

 返事がない。

 奈津希さんがそーっとドアを開け、中を覗く。

 そしてこっちを見て手招きする。


 見ると、ジェニーは巨大なディスプレイを前にペンタブで絵を描いている様子だ。

 集中しているせいかこちらにまるで気づかない。

 なので俺達はゆっくり静かにまわりを取り囲んで、画面を覗き込んだ。


 画面に映されているのはまさにあの工房の絵だった。

 ただ、色々付加された画像が増えている。


「ジェニー!」

 俺は肩を軽く叩いた。

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