第100話 午後は海へとお出かけだ

「それにしても、君のベッドは広くていいな。あれならいろは四十八手が全部試せそうだ」

 朝ごはんを食べながらでも奈津季さんはかっ飛ばす。

 味噌汁もご飯も鮭の切り身も美味しいのに話題がビロウだ。


「どうしても試したいなら俺以外にして下さい」


「なら犠牲者を用意してくれ。できるだけ生きの良い奴がいい」

 犠牲者と言っているあたり自分のキャラをわかっている。


「3年男子なら魔法工学科の玉川先輩あたりはどうです」


「奴は駄目だ。肝っ玉が小さい。ナニも小さそうだ」

 何という直接的な事を言うんだこの人は。

 何か朝からセクハラを延々とかまされてる気分だ。

 実際その通りなのだが。


「ところで今日はどんな予定なのだフェネック」

 もういちいち突っ込む気力もないので俺は素直に答える。


「何もなければ課題で使う電子基板の発注でもしようかなと」


 全自動草刈り機で使ってしまったアルドゥイーノ2枚とラズパイ2Bも補充して注文したいしセンサ類も使った分を補充して一通り揃えておきたい。

 ここは離島。

 だから課題が入ってから発注したのでは間に合わない可能性もあるのだ。

 まあ学校の売店でも最低限のチップは販売しているけれど。


「その発注作業は急げば午前中に終わる程度かい」

「まあ、急げば午前中には」

「それなら僕も午前中は鳥ハム作業等を一通りやるから午後はちょっと付き合ってくれないか」


 ああ、素直に答えず一日作業と言っておけばよかっただろうか。

 でもまあしょうがない。


「まあ予定はないですし、いいですよ」


「よっしゃ!」

 奈津季さんはガッツポーズ。

 しかし午後から何をする気だろう。

 不安だ。


 ◇◇◇

 

 そして午後2時。

 俺は奈津季さんと一緒に、由香里姉の愛車で海の上に来ていた。

 場所は学校の割とすぐ裏。

 直線距離で500メートルも離れていないだろう。

 そして奈津季さんは後ろのドアを全開にして、ぶっとい釣り竿で釣りをしている。


「うーん、ちと入口が狭くて竿が動かしにくいな。今度釣り用に空飛ぶ船1隻建造してくれや」


「適当な筐体は用意してくださいよ」


 そんな事を言いながら釣行中。

 なお、由香里姉は結構簡単に車を貸してくれた。


「ただし公道を走るのだけは禁止ね。あと運転は修限定ね」

 電話で出た制限事項はそれだけ。


 そして釣り道具は奈津季さんの家にあった。

 何でも奈津季さんの父親が趣味で釣りをやっていて道具が揃っているとのこと。

 笑えるくらい太い竿とでっかいリールと太い糸。

 餌は無く代わりに魚の形をした金属製の疑似餌を付けている。


「よし、このまま前方にゆっくり前進!」

 俺は言われたとおりにする。

 なお、俺の魔力だとこの車の速度はせいぜい時速10キロ程度まで。

 だから言われなくともゆっくりになるのだが。


「いやな、昔親父がここで大物を釣ったって言っていたんで、やってみたいと思っていたんだ。今朝ちょうど思いついてな。ただやっぱりバスのドアの中からだと釣りにくいな。視界も悪いし」


「流石に釣りに使うつもりは無かったですしね。ただ魚捕りは何回かしましたが」


「お、釣りじゃなければどうやって獲ったんだ」


「由香里姉に海を凍らないぎりぎりまで冷やしてもらって、浮いてきた魚をでかい網で掬いました」


「うーん、僕の魔法じゃまで出来ないな。広範囲の海水を温度下げるなんてかなり凶悪な魔力だぜそれ」


 そんな事をいいながら奈津希さんは疑似餌を投げては引くを繰り返している。


「どうですか、感触は」


「なかなかうまくいかないな。竿を振る代わりに風魔法使っているんで、そんなに船と遜色ない距離飛ばしているつもりなんだが。お、おおおおっ!」

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