第82話 描ける腕
「その足で先生の所へ駆けて行って、先生に抱きついていっぱいお礼言いますた。
そうしたら先生は長袖をまくって、右腕の肘まで出して見せてくれますた。
それまで気づかなかったのれすが、先生の右腕は義手ですた。
『あの時の私に必要だったのは、絵が描ける腕だったの。そしてあなたに必要だったのはきっと翔べる脚。
どう、跳べた?』
私は頷きますた。
そして誰が義手や義足を作ってくれたのかを聞きますた。
『義手を作ったのは日本の学生だった私の友人よ。そしてその義足は彼の教え子の作品』
私は是非この義足の製作者に会ってお礼を言いたい、そう先生に言いますた。
『私は彼に会いに留学したけれど、何ならあなたもそうしてみる。どうせ学年も変わることだし。魔法が使えないから結構厳しいかもしれないけれど、試験は英語でも受けられるわ。それにあなたはある程度日本語が出来るわよね』
確かにマンガやアニメを良く見ていたので、当時でも私は少しは日本語がわかりました。だから先生に是非にとお願いしました。
『あなたはまだ魔法が使えないから本当なら魔法工学科しか応募資格が無い。でも魔法を使う道具を使っているうちに魔法が使えるようになる事はよくある。だからぎりぎりまで学科選択は待って応募してみるわ』
そしてほぼ先生につきっきりで試験対策と日本語の勉強をしているうちに探知魔法をつかえるようになりますた。
そして試験にも無事受かりますた。
来る時に先生が、
『私は失敗したけれど、何なら彼を捕まえてくるぐらい頑張ってね』
と言って見送ってくれました。
そうして私はここに来たのれす」
そこまで話してジェニーは少し身体を起こして俺の方をまっすぐ見る。
「だから私はオサムに感謝しているれす。私が私として再び在るのもオサムのおかげれすから」
「いいや、礼を言うのは俺の方かもしれない」
俺は思う。
確かにあの義足はそれなりに頑張って作った。
機能もいろいろ考えたし仕組みもそれなりに工夫した。
でもジェニーの思い程の強さを込めて作った訳ではない。
あくまで課題として最高のものを作ろうとして作っただけ。
だからこんな感じに一方的に感謝されるとこそばゆいとともに申し訳ない。
でもそれ以上に俺は嬉しい。
こんなに俺の作品が感謝されて使ってもらえると思うと凄く嬉しい。
「まさかこの義足を作った時は、こんな事になるなんて思っていなかった。だからこんなに喜んで使って貰えるなんて俺は凄く嬉しい。何かもう物作り冥利に尽きるというかなんというか」
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