第49話 小話1の3 御風呂快適俺危険
「これは確かに気持ちいいす。快適す」
「でしょう」
由香里姉がドヤ顔をする。
例の空港先の崖の下。
学生会幹部恒例秘密行事、露天風呂。
香緒里ちゃんの騒動で無事中止になったのだが、ジェニーという才能を得て本日から復活してしまった。
困ったことに俺以外の全員、この決定に異論無いらしい。
ジェニーすら、
「わー、ジャパニーズ・バスいいすね。是非入りたいす」
という状況。
俺はしょうがないのでできるだけ何も見ないよう、頭を空っぽにするようにぼーっと湯に使っている。
「そう言えばジェニーって、昔から魔法が使えたのですか?」
「実はこの夏まで、全く魔法は使えなかったす。オサムの義足使うようになって、この学校に行きたいと思うようになって勉強し出してから、何故か少しずつ使えるようになたす」
「そういう事があるんですか、月見野先輩?」
「場合によりますけれどね。あの義足、魔法を多用しておりますでしょ」
俺の代わりに香緒里ちゃんが頷く。
「あの義足の動力は私の魔法です。制御系用の電気の供給も魔法を使っていますし質量の増減も魔法を使ってますけれど」
「その影響でもともと持っていた魔力が活性化したのでしょうね。稀にですけれどある事のようですわ」
そんな会話が聞こえるが俺は無視。
若干ぬるめのお湯が長湯にはちょうどいい。
そしてそれ以外は考えないし見ない。
鈴懸台先輩が大股開いて伸びていたりするのも見ない。
由香里姉が『少しのぼせたかな。』と言って近くの岩の上に座っていて全身丸見えなのも見ない。
気づいたら負けなのだ。
既に負けつつあるが。
月見野先輩が風呂から上がる。
そして全裸のままとことことマイクロバスの方へ歩いていき、小さいホワイトボードと細長い缶に棒が3本入ったものを持ってくる。
というか前を隠してくれ、頼むから。
「さて、お待ちかねのくじ引きの時間です。なお、あらかじめ3人分のベッドは指定されているので、残りの3箇所を決めるくじになります」
月見野先輩がホワイトボードに図を描く。
「あらかじめ後ろの2段ベッドの下段が私とミドリ、前のテーブルの場所を変形させたベッドの奥が長津田君の場所と指定させて頂いてますわ。
ですので空いている場所は前のベッドの手前側と後ろのベッドの上段。
くじの棒は前、後、後の3本が記載済みですわ。
不正行為が見られた場合は次週のくじ引き参加権剥奪、これで宜しいですかしら」
月見野先輩、そしてくじ参加者3人が立ち上がった。
前を見ているとおしりやおっぱいが見えてしまう。
だから俺は右横後ろ方向、海の方をぼんやり見る。
ああ今日も夕日で赤くなって綺麗だなあ、と。
左から、
「ちいっ!」
「ああ……」
という声が聞こえた。
最初のは由香里姉の声で次のは香緒里ちゃんの声。
という事は……
誰かが近づく気配。
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