機械オタクと魔女5人 ~Machine Nerd~

於田縫紀

序章 春の訪問者

序章1 幼馴染は突然に

 4月5日。

 春休み最後の日。

 俺、長津田修は自室のパソコンでアルドゥイーノのプログラムを書いていた。

 課題は既に終えているので単なる趣味の電子工作である。


 作っているのは目覚まし時計。

 ただし魔力使用の覚醒状態センサーを付けている。

 真に目が覚めないと音が止まないという代物だ。

 覚醒状態センサーをブレッドボードで繋ぎ、もう少しで完成。

 そんなところで寮内連絡用インタホンが点滅した。


「211号室長津田君、面会です」


 何だろう、そう思いつつ立ち上がって返答ボタンを押す。


「はい、今行きます」


 そう言って作りかけのプログラムをセーブし、パソコンはレジューム状態に落として部屋を出る。


 階段を降り、1階受付に向かう。


「はい、長津田です」

 寮監室の生徒側窓口に顔を出す。


「面会。外出するなら札を返しておけよ」

 誰だろうと思いながら表側へ。


「はい長津田ですが」

 そこにいるのは一人だけ。

 だからその一人が面会相手に間違いない。


 でもそれはこの場所ではまず見かけない美少女。

 何せここは高専の男子寮。

 だからまあしょうがない。

 そしてその少女を俺は知っていた。


「香緒里ちゃん、何で」

「どうも、久しぶりです」

 彼女は僕に頭を下げる。


 実家の2軒隣に住んでいる姉妹の妹の方、薊野香緒里ちゃんだ。

 記憶にあるより随分きれいになっているし成長もしているけれど。


 どうしたの、とか色々聞こうとして俺は思い留まる。

 ここは男子寮。

 ここで話しているのを見られたらまずい。

 すぐ噂になってしまう。

 たとえ相手が幼馴染と言えども。


 まずは場所替えだ。

 俺は俺の名前が書かれた出入札を逆側にする。


「とりあえず場所を変えるね。ここで話も何だし」


 彼女はちょっと不思議そうな顔をする。

「あれ、お部屋入れないのですか」


「男子寮だからね、ここ」

 ここは猛獣の住む危険地帯だ。

 彼女くらいの年齢の女子からみれば。


 そう言って外出簿に俺の名前と時間、行先を書く。

 行先は『店』とだけ書いておけば充分だ。


「じゃあ行ってきます」

「時間までには帰れよ」


 寮監の言葉を後ろに僕は香緒里ちゃんを連れてさっさとその場を去る。

 幸い寮の敷地を出るまで知り合いには合わずに済んだ。

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