条件提示
ルムネアは、一人で、
月明かりの中、上半身裸の男に相手にされていない女が集まって、寝ていた。
他の
そして、いくつもの、小さな星の光が。ルムネアのように取るに足らない星の光だ。いや、死んだら、ルムネアもあの星の光のようになれるのだろうか、
大変な一日だったが、状況が大きく変わった、大変な一日でもあった。
ウリックに言われた事を考えていたが、どれも本当に事だった。
しかし、間違いもたくさんあった。ルムネアは、まだたくさん、ウリックに話していないことがあった。
<スパム・タング>が言っていた、巨人の影とバルドラ家が関係していることは、明白だ。
しかし、<スパム・タング>は"影"といい。
バルドラ家の領地の広さや動員兵力をルムネアは、正確には知らないが、バルドラ家の
ギャリトン家とは、比べ物にならない。レディ・バルドラこと、レディ・ミゼアの貧素なドレスと西の国の王妃ゼトアナと比べても、比較にならないほど質素だった。
そんなことでしか、各家の戦力を比較できないことを、ウリックは、指摘していたのだろう。
考えれば、考えるほど、ウリックの言っていたとおりだ。
しかし、ウリックに宣誓させたように、自分もじつは、心に誓っていた。
弟を救出することと、家を再興させることを。
この二つだけは、どうしても、譲れない。
たった半日だが、ここで、
そんなことを考えていると、ウトウトしだした。ここ数日間ルムネアは攻城戦の不消瓶投射騒ぎで、ロクにしっかり眠った日々が少なかった。
急速に眠気が襲ってきた。
朝、揺り動かされて、ルムネアは起きた。
「起きてください、マイ・レディ」
ウリックの天を向いた、小さな鼻が、上から見下ろしている。
「なんですか」
「
「そうですか、、」
正直、眠い。けど、起きなければ。
「紋章は?」
「二つの拳、バルドラ家です」
ルムネアの目つきが変わった。
「バルドラ家に何かあるみたいですね。パックリーダーたちが、もう
「また、喧嘩になるのでしょうが、私のこころは、決まっています」
「と、思いました」
「ところで、サー・ウリック、怪我は大丈夫ですか?」
「まぁ、なんとか、昨日の夜は、ケシの実が効いていたみたいですね、痛いのは、今朝のほうが、痛いですけど、、」
「なによりです」
「弟君は、何家におられるのですか?」
短い、沈黙の後、ルムネアが、口を開いた。
「私たちは、西の国の貴族です、バルドラ家の被後見人となっています」
「バルドラ家は、今や、<狼の遠吠え>城を保持する、西の国の王家ですよ、余計難しくなりましたね」
月下人の醜女だが、若い女<ツー・ムーンズ>が、昨晩とは、うって変わって、しんけんな面持ちで、朝食を運んできた。
「おまえら、若き、継がい《つがい》のクロージャーに渡せる、最後の食事」
「継がい《つがい》では、ありません。主従です」
ルムネアがすぐ訂正する。
ウァンダリア人の二人は、貪るように食べた。次、何時食えるか、わからない。
「昨晩から、少し、考えが変わったのですか?」
「ええ少しね」とウリック。
ウリックから、切り出した。
「お互い、本音で話しませんか、レディ・ルムネア、あなたは俺に対して、隠し事が多すぎますし、会って、まだ二日ですよ、。信用しろという方が無理です」
「誓いを立ててる、直接の誓約者に対しては、私のという意味で、言って、マイか、ム、を尊称の前につけなさい」
「イエス・マイ・レディ」
しかし、
「まず、最初に言っておきますが、マイ・レディ、あなたが、読んだり、聞いたりして、知っている、すべての騎士物語や英雄譚は、すべてウソです」
ルムネアは口の周りに、たくさんの白いカデナッツの実をつけて沈黙。まだ、多くの
「吟遊詩人も、仕事で、謳っているのです、多少どころか、みなが聞きたがるようにかなり誇張したり、創作したり、しています。史文として残っている英雄譚の本など、もっとです。本を売らなければ、なりませんから。宮廷に訪れた吟遊詩人も、面白い話ばかりしたでしょう」
ルムネア、
「私は、貞操を完全に守った聖神の教えを守った慈悲深いレディや、レディを守ったナイツなど、実際に見たことがありません。また、無駄な殺生や暴力を自身で戒めているナイツやロードもです。連中は、自分と同等な力を持った相手にだけ、尊敬を与え、条件を出し話し合います、それ以外は人だとすら思っていません、同じナイトや、ロードでも、力が弱いと、動物のように切り刻まれ、焼かれます。それを止めるものなど、誰もいません、誰か、止めたり、戒めたりするモノが居るのなら、逆に教えてほしいぐらいです」
「随分、偏った、モノの見かたですね、ひねくれているとしか、言いようが、ありません。あなたは、職業がら、
今度は、ウリックがやや黙ったが、短い時間だった。
「私の条件は、単純です」
ウリックは言った。
「何でしょう、誓いを立てたものの正当なる要求として、このルムネアは聞く用意があります。発言を許します」
「今まで読んだり、聞いて見知った、ナイツ、ロード、レディの貴族に関する、話や概念を一切捨ててください、これから、踏み出す世界はそういう世界です」
「それだけですか」
「もう一つ、重要なことがあります。私たちは、死人や負傷者から武具を剥ぎ取る
「それだけですか」
「これだけです」
「いいでしょう、ルムネア・オブ・ウァンノリアが、全ての神々、ウァンダリアの大地、そして、一度も、拝んだことがありませんが、この
「ウァンノリア!?」
ウリックは、声に出して、言うと、驚いて二の句を告げられなかった。
「これで、あなたも、わかるでしょう、約定をきちっと守る貴族もいるのです。あなたの目の前に」
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