第3話 VSクレーン

100円玉が箱に吸い込まれ、チャリンと音を鳴らした。


聴こえ始めた軽快なBGMと共に、俺と弟は神経を研ぎ澄ます。


ここで負けたら兄としてのメンツが……などと思いつつ、筒状のお菓子の入ったクレーンを睨む。

「兄ちゃん、多く取ったら勝ちで良いの?」

「うん、いいよ」


ふう、と息を吐く。

そして緊張でぶれる腕を抑えつつ、慎重かつ素早くボタンを押した…………。




俺は100円で3個取るという好成績。

自己ベストに鼻高々となっていると、隣では空恐ろしい状況が生まれていた。

「この子凄くないか……」

「歳の割に上手いな……」

などと囁く声が聞こえるのである。

その中心、俺の弟はお菓子の筒を8個も同時ゲットしていたのだった。


完全な敗北だった。

ゲームでは、弟に勝てない…………。

俺がある意味諦めた瞬間となった。

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ゲーム能力に振るのを忘れていたのさ アーモンド @armond-tree

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