動静

忌引きでテレビにも出て、しっかり有名人になってしまった俺は殺したことに少し後悔した。遺産にも目ぼしいものはなく、悪目立ちし過ぎたことは中々堪える。


人間として。

なによりイチイチ話しかけてくるクラスの奴等、テレビ局の人間、近所の大人…俺はうんざりしていた。そんなときによく間に割って入って逃げさせてくれた茜はやはり親友だ。本当の。


「しかしお前が全国ネットに出る日が来るとはな!」

「お前よ…それ喪に服す人間に言う言葉か?」

「お前だって俺の婆ちゃん死んだとき『お年玉貰えねえな‼』とか言ったじゃねえか」

「言ってねえわ!!!!」

「あ…それお前の婆ちゃんが死んだとき俺が言ったんだった」

「覚えてねえけどお前…」



お兄ちゃんの様子が妙だ。元から世間を小馬鹿にしたような目をしてる人だったけど、今は全然違う。冷たくなったとかじゃなくて、優しくなってる。楽しそうにしてる。ついこないだまで死んだ魚みたいな目してた癖に…

と言うわけで部屋を漁ってみた。彼女ができてんなら写真くらい置いてるだろ…ん?

防災バッグがない…地震でも予知したのか?

…鏡も割れてる。ていうかそうだ。何がおかしいって、小汚なかった部屋が整理されてることだよ…


何を考えてるか自分でもわからないのに、漠然と不安だけがある。

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