不確かな

金の尽きない財布がある。それだけで生きていける。自分が誰かなどさしたる問題ではない。しかしそれがなんであろうか。自分に今ある肩書きは「殺人者」くらいだ。生きる意味も亡くしたといっていい。自分の罪の深さに目を背けたくなる。


死にたい。


「死ねばいいじゃん」

これまでの僕ならこう言っていたに違いない。命の重さにこうも縛られるとは思っていなかった日々は幸せだった。身に余る出来事などを求めた罪…


時計は12時を回る。結局今日も生きてしまった。


「お兄ちゃん」

俺は突然声をかけられはっとしていた。"お兄ちゃん"なんて言うのか、と驚いた。祖父(と言うべきか迷うが)の葬式はかなり長く続き、もう夜は遅い。

「…大丈夫?」

何が、と聞こうとすると

「昔から血とか苦手だったよね」

「ああ…(そうだったのか?)」

「それに仲良くはなかっただろうけど、おじいちゃんの死体なんて見ちゃって」

電話の時とは思えないような話し方だな…

「まだ色々整理つかないところはあるよ。でも母さんのがきっと辛いだろうし…長男だし、な。」

「そっか」

「…冷えるし、もう入ろう」

「うん。」



(やっぱり違う)

「突然過ぎだよな…」

(なにかあったのかな)

「もっと色々知りたかったよ」

(そんなの)




葬式の様子は中継されていた。インタビューに答える俺がいる。妹も映っている。泣く母も…やけにしっかりしている画面の中の俺は、まるで一家の家長の務めでもしてるようだ。俺はもう要らないんだな。ならなにも気にすることはない…今日は


今日こそは

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