幸不苦

漫喫で一晩を過ごした。どうなったのか確かめたくて家電量販店に行った。すでにニュースは殺人事件の話題で満たされていた。この先死ぬならどうでもいいことじゃないのか?考えると頭が痛くなる。

ー閑静な住宅街でなにがー

男性(79)死亡 殺人事件か


昨日午後4時頃、「祖父が血を流して倒れている」と警察に通報があり、駆けつけた消防がその場で死亡を確認しました。現場は激しく争った形跡があり、被害者の高齢男性は胸部に深い刺し傷があり警察は殺人事件とみて捜査しています。

被害にあった高齢男性は****町に住む高野晴幸さん79歳、地元では穏やかで優しいことで知られている牧師だったといい、事件当日の朝も元気に近所の人と挨拶を交わしていたそうですー


ニュースキャスターの神妙な顔。アイツは自分で通報したのだろうか。画面に映る祖父の写真は笑っていた…


「昔から優しい印象はありませんでした」

自分の声に驚いた。悪魔だ。

「ただ最後に会ったときには周りが言う通りの人で…もっと話したかった」

自分の記憶が大体知られていることに愕然とする。まさか今も共有されてたりしないよな…?

だがそれもそうだ。普通に生活してるんだ。なんの支障もなく…もはや悪魔は俺なんだ。俺になったんだ…そして人を殺した俺こそ悪魔なんだ。お祖父さんの言葉がわかった気がして…泣いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る