俺がいなくなった日

脚にヒビが入ったかもしれない。それでも必死に家から離れた。召喚の瞬間を撮影してたスマホ置いてきちまったな…とか冷静なフリをしてみるがうまくいかない。金はある。とりあえず今は離れなければ…


久しぶりに切符で乗る電車は妙な安心感があった。とりあえず終点までいこうかー



「起きてるよー!」

喜びに震える声をなんとか平常に保って応えた。

「なんか大きな音がしなかった?」

「猫が屋根の上にいたっぽい」

あらそう、と返事はやんだ。姿を映すとき大体の性質は付いてくるし情報もある。始業式ってのは教育機関の長期休暇明けのイベントみたいなモノでやたら長話をされるものみたいだ。憂鬱なんだろうな、全国。

「ちゃんと課題終わらせてるの?」

「なんとかなった」

実はさっき時間を遅らせてなんとかなったんだけど。アイツ仕事ほっぽって悪魔召喚しようとするとかなかなかアホだな…

「行ってきます」

「生きて帰ってこいよー」

どうやらこの家は多少おかしいらしい。でもこの日常ってのが堪らなく新鮮で美しかった。アイツには本当に感謝しないとな…

「よーひっさしぶりだな幸広」

「おー」

こいつは高野幸広という名前だったらしい。性格は暗めで大人しい、人の名前を呼ぶのも躊躇うような奴みたいだ。扱いづらい…

「宿題は終わったか?俺は諦めた。」

「お前な…高校生にもなってそれか」

高校一年生だ。

「うるせえ!中学時代は完璧だったわ!」

「いや高校こそ頑張れよ」

「お前俺に彼女がいるのを知っててそれをいうのか?夏に勉強ばっかしてたら愛想尽かされんだろが。」

え?こいつの情報にはそんなんなかったけど…100%ではないのな…

「ならなおさら勉強しろ。赤点とって補習でも受けてみろ。そのほうが愛想尽かされんわ。」

「いや彼女に驚けよ…お前知らなかったはずだろ…」

しまったハッタリか!!深い意味がなさそうでよかった…

「それに彼女だって成績悪いから、アイツが赤点とるなら俺も一緒に赤点とったるわ。」

「勝手にしろ…」


ああ


楽しい。


俺は今人間として生きているんだな。



ツギハ シュウテン ****エキ デス ゴジョウシャ アリガトウゴザイマス


アナウンスに目が覚める。そういえば昨日徹夜してたのか…そして今終点に着くなら、これは夢じゃないってことだ。

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