偽者

ガイドブックの中身を読むのは流石に苦戦した。だが挿し絵もあるもんだから読めない部分は感覚で補填することにした。ページ前半は悪魔の種類が書いてあった。みたことあるのもいくつかいた。ページの構成が同じなので様相が変わるまですっ飛ばした。50ページはあった。

召喚方法

テンションが一気に上がる文字列だ。落ち着け俺。一種類の悪魔についてかなり長く書いてある。そう簡単にはいかないということだろうそうでなければ楽しくない。さてまず一番上に書いてあるのは…必要な物



詰みかもしれない。

ちょっと待ってくれ大体羊が一頭は必要だぞ。コウモリのミイラなんてのもある…そうだこの本は日本の物ではないということを忘れていた…いやでも一人くらいいるだろ日用品で召喚可能なお手軽悪魔。ページ数が果てしないけど諦めるのは全部読みきってからだ。

ただ本を読むのにこんな熱中できる自分がまだいたのか、と感心した。

いたぞ、いやがったお手軽悪魔。こいつだ。どんな悪魔かは知らないけど。

必要な物

全身が映る鏡(ありがとう母さん)

魔方陣(絵の具で大丈夫そうだ)

松明(マッチで大丈夫そうだ)

月明かりの差す窓(あった!)

自分の髪の毛一本(痛い)

手順

鏡を月明かりを直角に受ける場所に置き、自分の立つ位置で映る姿のヘソの辺りのに魔方陣を描く。下弦の月の夜(深夜)、月明かりを背に浴びるとき火を灯し、自分の髪の毛を燃やして鏡に向かって放る…

ヴォォォォォォ!!!!!!

唸り声のような物が突然響いた。マジか。マジカルマジか。

いつの間にか魔方陣の高さ辺りに人魂のような物が浮いていた。ちゃんと録画できてんのかな。


おい!

!?

「俺だよ俺!無視すんな‼喚んだのてめえだろ!」

口悪いな…しかもどっかで聞いたような声だ。

「こんな時代に召喚魔術なんて使えるやつぁいねえと思ってたけどよ…とりあえず呼び出してくれたことには感謝するぜ。」

そうなのか。感謝するもんなのか。

「呼び出すくらいだから願いは決まってるよな?今から考えるとかだるいぜ?」

マジか。考えてないっす。

「だるいぜ…とりあえず説明するとな、物が欲しいとか誰かを消したいとか、そういうのは大体OKだ。空を飛びたいとか気弾打ちたいとかはダメだ。力は無限じゃないし細かい設定もできない。大体わかったろ。さあ言え。」

迷う…迷うな…超常の力は無理なんだろ…?いや真剣に考えるな、俺はなにが欲しい…?

「5000兆円ください」

「家潰れるぞ」

そうですね。どうにかしてくれよ通帳で渡すとかさ…

「5000兆円でる財布ください。四次元に広がるポケットみたいに。」

「わかるか!四次元ってなんだよ!まあ言いたいことはわかった…で、どっちだ?」

どっち?

「がま口か折り畳みか」

二択かよ。他にもあるだろ。

「がま口で」

「よしわかった。じゃあいくぞ…」

ちょっと待て心の準備が…



凄まじい閃光が止んで目を開けた時、俺の目に映ったのは趣味の悪いがま口財布と、紛れもない俺自身の姿だった。

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