二人目の悪魔

かるしん

本物

暇だ。

とりあえず浮かぶ言葉、口癖、呟いたー…

宿題はあるしテストも近い。暇などではない。自分自身に無気力になってなにもできないことをなにもしていないと勘違いして気付かない振りをしている。

暇だ。

ふと頭をよぎったのはあの古い本のことだ。先日父方の祖父が「先が短いから今のうちから荷の整理がしたい」だの言ってたとかで手伝いに派遣された。祖父は牧師で近所では優しいことで有名になるほどらしいが何故か俺には昔から冷たかった。正直手伝いは気乗りしなかった。でも手伝いに行ったときは昔のような堅い印象はなく、弱々しさが滲み出るような老人となっていた。それになにか思うところあったのか、申し訳なさそうに接してくれた。理由は聞けなかったけれど、少しだけ嬉しかった。

問題はここからだ。昔祖父が書斎として使っていた部屋の整理をしていた時、一冊の辞書くらいの大きさの本に目が留まった。

「あれは魔導書に違いない」

なんて確信した。アホか。でもそれくらいになにか惹き付けられて、祖父に聞かずに持ち出してしまった。1度も寄越さなかったお年玉のツケだと思ってくれ。どうかこの通り。

開いて見ると案の定読めない。時折挿し絵があるが文字の形にまるで見覚えが

あった。

どこかで見たことある気がしたが思い出せない。いくらググってもそれらしいものすら出てこない。だけどなんとなくページをめくると規則性のようなものが感じられ、解読する気になった。気づけば日が暮れている。

翌朝、やたら早起きしてもう一度あの魔導書(ということにしておく)に向かうと表紙が読めてしまった。

「悪魔召喚ガイドブック…」

ノリが軽いな。いや俺の中の表現でガイドブックが軽いだけなんだ。そっちだともっと仰々しいニュアンスに違いない。いよいよ怪しくなってきたのでここらでここれが本物かどうか確かめてみよう。破れない、燃えない。というか処分できない。こんなところだろう。手始めにハサミで切ろうとしたがやはり切れない。ノコギリで本全体を切ろうともしたが切れない。ガスコンロで炙ったがほんのり温かくなっただけ。これは…本物だ。

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