「未来から来たって言ったら信じる?」

 「え?」

 彼がはなったこの言葉は一瞬笑いを誘ったのかと勘違いをしたが、この空気で冗談を言うような奴ではないことぐらいわかっていた。

 「俺らの時代では、時間を自由に行き来出来る機械が発明された。これを指にはめることで飛ぶことが出来る。一個五回だけだ。使い切ると何の意味もないただの指輪になる。俺はあと三回ある」

 僕は話を遮るように、

 「ちょっと良いか?未来から何でこの時代に来たんだ?」

 「今から話すよ…」

 彼は、一拍おいてから、

 「俺らの時代にはある人がとても重大な人なんだ。それは、」

 なぜだかこの先に言われる人の名前がわかった気がした。

 「真琴か…?」

 「そうだ。真琴は、俺らの時代の救世主だ」

 「救世主?」

 「実はな、真琴は将来天才的な才能を見出して学者になったんだ。このタイムリープの機械を作ったのだって、真琴なんだぜ?」

 「じゃあ、率直に言うが何で優太が生きているんだ?」

 「俺らの時代では生きたことになっている」

 「優太の話、矛盾してないか?」

 「俺は、一回タイムリープした。しなかった時代は中学の時にすでに死んでいる。俺が飛んだ時は生きてたと思ってた。なのに…」

 「優太はいつからいたんだ?」

 「おいおいおい、これでも愛斗と同じクラスなんだぜ?」

 「そうだったのか!?」

 「やれやれ」

 それからというもの優太が今までしてきたことを話した。イジメから真琴を護ったり、真琴を殺したやつが真琴を殺す前に殺したりまでもした。

 「なのに真琴は死んでしまう運命になっている。この指輪だって、全額使って払ったのにもうこれ一個しかねえ」

 「そもそも本当に真琴が地球を守るのか?」

 「地球が救われた未来に行った時に真琴が新聞に載ってた。地球を救った救世主としてな。だから絶対に真琴のはずなんだ」

 「それでどうするんだ?」

 「実は俺は、愛斗に全てを託したんだ」

 「僕に?」

 「愛斗は、俺が出来なかった事をやってくれた。結局真琴は死んでいたけど、もっと前からああだったら、真琴は…。とにかく、愛斗!お前が真琴に助けられたように、愛斗も真琴を助けてやれ!」

 僕は、何の迷いもなく首を縦に振った。僕は真琴を助けたい。例えどんな結末になっても。真琴が死ななければ良い。本気でそう思った。

 「じゃあ、これから“あの時”へ飛ぶぞ?準備は良いか?」

 「ああ」

 「じゃあ俺の手を握って目を瞑るんだ。」

 僕は優太の手を握り、目を瞑った。すると一瞬記憶が飛んだような気がしたがすぐに脳に戻ったような感覚がした。目を開けなくても場所が違うことがわかった。

 ここは間違いなく僕が通っていた中学校だ。

 「良いか?この後、真琴は屋上で自殺を図る。さあ!行ってこい!」

 そう言われ背中を強く押され、屋上へ出た。

 そこにはフェンスの向こうにいる真琴の姿があった。真琴は今にも飛びそうである。僕は真琴に向かって、

 「何をしているの?」と聞いた。すると彼女は、とても優しい声で

 「見てわからない?自殺しようとしてるの。じゃあね」

 「待ってくれ!」

 そう言っても真琴は今にも飛び降りそうだ。僕は、

 「真琴!」

 と叫んだ。すると真琴は驚いた表情を見せ、

 「何で私の名前を?」

 「僕は君をずっと前から知っている。君が超能力者だって事も。」

 「な、何でその事を?」

 「付き合ってくれ!」

 この時何で自分がそう言ったのかは未だにわからない。ただあの時、フェンス越しから見えた真琴の微笑みは忘れられなかった。

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