何回も咲く花のような。

いとあはれ

 「また逢えると良いね…。」

 彼女のこの言葉は、今でも耳に残っている。

 僕は窓の外の景色を眺め、あの時の真琴の顔、声、感情を思い出していた。今でも鮮明に憶えている。いるはずのない真琴がいるかのように。でも、気がつくと現実に引き戻される。真琴はとっくのとうにこの世にはいない。真琴は僕が中学一年生の時に殺されている。

 「もうあれから七年か。」

 僕はひとりでにそう呟いていた。僕は、授業に集中しようと教授に目を戻した。

 空には雲がひとつもなく、太陽が直に体に当たり汗が滲んでいる。この前行った成人式に比べ異常なほどに気温が上がっていた。僕は額に流れてくる汗をハンカチで拭った。もう少しで真琴の本当の命日か。そう思いながら、駅に向かって歩いていた。すると携帯が鳴り出した。画面には、優太と書かれていた。優太とは中学からの友達の千葉優太ちばゆうただ。僕はすぐに携帯を手に取った。

 「もしもし?」

 「よぉ!愛斗!ちょっと時間あるか?」

 「おう」

 「実はさ、今週末に同窓会あるんだけど行くかー?」

 同窓会か。そういえば成人式の後に明央がそんなような事を言っていたような。僕は特に断る理由が無かったので、

 「良いよ」と言い電話を切った。今日はまだ水曜日なのでまだ時間があると思ったが、すぐに日曜日になった。僕は、日曜日にバイトをしていて今日に限って長引いてしまった。今日は雨が降っていた。僕は、仕方なく雨に濡れながら自転車をこいだ。別に急いでいたつもりはなかった。僕は自転車をこいでいると、目の前の信号が赤から、青に変わった。なので僕が止まらずに進もうとしたら、横からトラックが突っ込んできた。僕は目を瞑った。別に怖かった訳ではない。僕は死を覚悟した。しかし、ブレーキ音は聞こえなかった。僕は目を開けた。するとそこにはトラックはなかった。あるのは、横に倒れた自転車ぐらいだ。僕は辺りを見回した。特に変わった様子は無い。しかし、何かが違う気がする。すると、優太から電話が掛かってきた。

 「おい、愛斗!遅れてるぞ!大丈夫か!?」

 「大丈夫だけど、何かがおかしい。まるで過去に戻ったような感じだ。」

 「何寝ぼけてんだ?それより早く来いよ!」

 そう言われ、一方的に電話を切られた。

 「きっと気のせいだろう。」

 僕はそう呟いて、自転車を立ててこぎ始めた。

 僕は考えながらこいでいたので、集合時刻よりも二十分遅れて着いた。

 「遅かったじゃねえか!愛斗~。」

 「だいぶ飲んだな。」

 「まあ、そんなことより飲めよ~。」

 「話が噛み合ってないぞ?」

 それから、昔の同級生と飲みに飲みまくった。僕が入ってきてから、とうに一時間は過ぎているが賑わいは変わりなかった。あれから少しずつではあるがどんどん同級生達は帰って行ってしまっている。

 遂には優太と明央と僕しか残っていなかった。明央はもうクラクラしている。すると隣にいた優太が僕を外に誘った。僕は断る理由がなかったので、一緒について行くことにした。

 「あ~、夜風は気持ちいいな!」

 「ああ」

 僕は何故優太が外に誘ったのか理由を聞きたかったが、静かに待っていることにした。すると優太の口から、

 「今日は真琴の本当の“命日”だな。」

 「え?」

 僕は戸惑った。僕しか知らないであろう真実。真海ならともかく真琴と言った優太の口を疑った。

 「実はさ、俺。ずっと前から真琴の存在気づいていたんだよ。」

 「ずっと前から?」

 僕は内心とても驚いている。僕以外に真実を知っている人がいるなんて。

 「ああ、俺はお前と同じ中一の時に知り合った。勿論、愛斗ともな。」

 「え…」

 「まあ、覚えてなくても当然か。真琴に記憶消されたんだし。そういうところ曖昧って真琴言ってたな。」

 「優太はどこまで知ってるんだ?」

 「…全部だよ。後、愛斗さっき電話で過去に戻ったような感じだ。っていてたよな?それは俺が愛斗をタイムリープさせ。」

 「タイムリープ?」

 「そう、タイムリープ。つまり愛斗は轢かれそうなところをタイムリープさせて無事だったって事。」

 「何でタイムリープにそこまで詳しいんだ?」

 「実は俺、未来から来たって言ったら、信じる?」

 「え?」

 そこから、始まった。僕と優太の時を超えた真琴を守るミッションが。

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