第4話 会いたい、叫び、甘い物
____あれから、とーどーに会わないまま1ヶ月が過ぎた。
放課後に教室でとーどーを待っていたりもしているけれども、会えたことは無い。
最近はあの日の出来事が全部夢なんじゃないかって思えてきた。
けれども、その考えを否定するように鬼山が毎日話しかけてくるようになった。
「最近、東堂はどうだ?」とか、「東堂元気か?最近学校来てないよな」とか。
聞かれる度にお前はとーどーの彼女ですかって聴きたくなる。
別に寂しいって訳じゃ無いと思うけれど、会えないとなんだか胸にポッカリと穴が空いたようだ。
例えるなら新品の消しゴムの角を他人に使われた様な、そんな感じの。
考えていたらなんだか叫びたくなって、誰もいない教室の窓を開けて思いっきり叫んだ。
なんだかスッキリするような…癖になる。
あ、シンナーとか麻薬じゃないよ。ただ叫んでいるだけ。
もう一度、叫んでみる。
ここでとーどーが来て〜みたいなのを理想していたのかもしれない。
私の叫び声は外で部活をしていた運動部の人に変な目で見られたくらいで、とーどーは来なかった。
叫んでいる内に段々と楽しくなってきて、人目なんか気にも留めない様になってきた。
叫んでいる内容はとーどーの事だったり、意味不明な授業のことだったり、とーどーの事だったり……。
いろんなことを叫んだ。
喉が悲鳴を上げるまで叫んだ。
少し休憩、と席に戻って水筒を取り出す。
中身は普通の麦茶。
だけどお昼にペットボトルのお茶を足したから、味が混ざって何とも言えない味だった。
机に放って置いたままのプリントを見る。
授業中、眠たくて寝ていたからってそれの罰。
私のレベルが1なら睡魔のレベルは絶対に100超えてる。それかカンストしてる。これ絶対。
解く気にもなれなくって意味のなく鞄を漁る。
飴が6つ入っていた。
1個はメロンで2個目はイチゴ。
3個目はブドウで4個目はレモン。
5、6個目はオレンジ。
今日のお昼、友達のななみんに貰ったものだった。
イチゴの飴を口に放り込む。
ふわりと香るイチゴの匂いと甘い味。
久しぶりに食べた飴は美味しかった。
お茶と飴で喉を潤したところで、また叫ぶ。
今度は「イチゴ美味しいー!」とか、「麦茶に別のお茶足すんじゃなかったー!」とか。
何度か叫んだ所で、なんだか虚しくなって
空を見上げる。
まだ明るい空は入道雲を浮かべていた。
____雨、降らないで欲しいなぁ。
なんて呟きは誰もいない教室に溶けてなくなった。
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