第3話 優しさ?

「ん?嗚呼。東堂、来てたのか!でもなぁ、制服着てこいよ!」


と愛想のいい笑みを浮かべている鬼山。


「ははっ、そうですね。それよりも佐山先生、どうかしたんですか?」


とーどーは爽やかそうに笑っている。


私は確信した。とーどーは猫被りが上手い。


「そうだった、ここに人が来てないか??」


間違いなく私の事だろう。まずい。とーどーを見てもとーどーは爽やかそうに笑っているだけで、表情が読めない。


「人…ですか?今佐山先生が来ただけですよ」


「そうか…。邪魔して悪かったな、引き続き頑張れよ!」


鬼山はドアを閉めて走ってどっかに行った。


足音が聞こえなくなったところで、私は盛大な溜息をついた。自分の肺活量を疑う程の。


「お前なぁ、そーゆー事は先に言えよな!」


「急だったし!!あー、怖かった…」


よいしょ、とその場から立ち上がる。


とーどーから「お婆ちゃんかよ…」って聞こえてきたが無視。無視が一番。


黒板の上にある時計を見ると、6時24分を指している。


「もう帰らないと。とーどーは?」


私が聞くと、とーどーは机に掛けてた鞄を持って教室の電気を消した。


私は廊下を注意深く見て、廊下に出た。


とーどーも出て来て鍵を閉めていた。


「鬼山居ないよなぁ…。大丈夫だよなぁ…」


そう呟きながら忍び足で階段の方へ足を進める。


とーどーは鍵を持って、後をついてきた。


「よしっ、とーどー!どっちが上手く忍び足出来るか勝負ね!」


私はとーどーの声も聞かずに忍び足で走り出した。


階段を降りて、渡り廊下に差し掛かった所だった。


ドンッと強い衝撃を受けて反動で後ろに尻餅をつく。

前を見てみると、鬼山が居た。


鬼山は驚いたように私を見る。


「2年B組の宮原結衣乃…」


私の名前を呟いた鬼山。


鬼山が何か言おうと口を動かした時、


「結衣乃、だから先行くなって言っただろ!佐山先生、すみません。」


後ろから走ってきたのはとーどーだった。

とーどーは私の前に立つと


「此奴に迎えに来てもらってたんですよ」


と嘘を語り出した。


鬼山はすっかり信じて、


「廊下は走るなよー、気おつけて帰れよ!」


と職員室に戻って行った。


「っあ…ぶなかったぁ!」


とーどーはくるりと振り向いて


「なーにが危なかっただよ!!お前馬鹿なの!?」


と怒っているようだ。


「ごめん!あっ、でも勝負は私の勝ちね!!」


「馬鹿だろ!お前絶対馬鹿だろ!」


「馬鹿馬鹿うるさいな!!とーどーの方が馬鹿でしょ!」


そんな言い争いを続けながら歩く。


たこ焼き屋を超えて、私の家の前についた。


「あ、ここ!私の家!」


私がそう言うと、とーどーは手をヒラヒラと振って反対方向。つまり歩いてきた方へ戻っていった。


「バイバイ!!またね!!」


とーどーの後ろ姿に向かって叫んだ。


とーどーは上半身だけ振り向いて


「んじゃーなー。」


と手を振り返してくれた。


____送ってくれたのかな。



空はすっかりと暗くなっていて、月が顔を出していた。





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