第2話 鬼ごっこと男の子

階段を上がったらすぐ隣はトイレがある。

トイレに長時間居るのは気持ち的に嫌なので別の所に隠れよう。

トイレを超えたら1年生のクラスが並んでいる。


ズラーッと並んでいるのだが、どこも鍵が掛かっていて入れない。

鬼山はやっと階段を上りきったようで、ゼーハーと息を切らして叫んでいる。


上ってきた方と逆の階段を使って降りる。

第三校舎に用はないから、2年B組へと急ごう。


鬼山が1人第三校舎を探す姿を思い浮かべてクスッと笑った。


第三校舎から第二校舎迄は掲示板があるだけで、苦労すること無く通れた。

第二校舎は最近改築してまだ新しい。

タイルの床を走ると滑って、何だか楽しい。

走る→滑るを繰り返して、楽しみながら2年B組の前に来た。


流石にドアは____


開いている。担任の先生が閉め忘れたんだろう。不用心だなぁ…。


ガラッと音を立てて開けると、そこには誰かが居た。

男の子だ。

私の席に座って、何かやってる。

集中している様で、こちらには気付いてない。

結構な音を立てたのに。


また忍び足で忍者になった気分で近づいて見る。

男の子は国語のプリントを解いている。


やっている内容は、昨日配られたプリントだ。

生態系のバランスと保全〜ってやつ。

男の子は手を止めることなく解いている。


「あ、そこ違う」


やってしまった。つい口に出してしまった。

男の子は目を見開いて私を見ている。

私は気まずくなって、苦笑いを口に浮かべることしか出来なかった。


「どこ?」


男の子は平常心を取り戻したように、プリントを見ながら言った。


「ええっとね、4番のやつ。そこ、自然浄化!!」


自然浄化は確か、分解者によって分解されたりなんとかして減少するやつみたいな感じだったはず。


男の子は4番の解答を消して、自然浄化と書き直していた。

綺麗な字だ、字は人を表すとかなんたら言うけれど、それは本当だと思う。


「本当だ。ありがとう」


「いーえー」


どこにでもありそうな会話をして、空気に和んでいたけれど、この子誰だろう?

制服を着ていないし、不審者?

思い切って聞いてみることにした。


「ねぇ、君。不審者?」


私がそう聞くと男の子は笑って


「こんなにストレートに不審者か聞かれたの、初めてなんだけど!」


辞書の言葉を借りれば、"大笑い"が似合いそうな程に笑っている男の子。


「それじゃあ誰?!制服も着てないし…」


男の子はまた笑って


「東堂、東に本堂の堂。お前は?」


「それじゃあとーどーだね。私は宮原結衣乃!」


「とーどーってなんだよ、ゲームキャラかよ。」


とーどーはマイナーだと思った。普通はトドだとか、その変思い付くもんじゃ無いのか。


「とーどー、そこ。私の席なんだけど!」


「それじゃあこれ、お前の?」


とーどーはそう言って巾着袋を出した。


サイズは掌サイズ。高校に入って全然会えない友達と作ったもので、中にはお守りが入っている。


「それそれ!!」


とーどーから取って、そっと袋を撫でる。


どうやら置いて帰っていたらしい。


とーどーにお礼を言って隣の席に腰をかける。


他愛の無い会話をしていると、何処からかバタバタと足音が聞こえて来た。


間違いなく鬼山だろう。


第三校舎に居ないことがわかってここまで来たのか。


まずいまずい。何処か隠れる場所と周りを見渡してみても何も無い。


もうこうなったら。教卓に背を預け座る。


とーどーは私が何をしているかわかってないみたいで不思議そうにこっちを見つめている。


その内、ガタッと音を立ててドアが開いて、鬼山が入ってきた。


心拍数が上昇する。






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