放課後の君と
@08931
第1話 放課後の君と鬼と鬼ごっこ
放課後、2年1組にきっと君は居る。
・
帰って気付いた。大切なアレが無いことに。
時間はまだ5時。今日は短縮授業だったからお昼に終わった。
____大丈夫。
ポケットに野口英世1枚と携帯を入れる。
確か、第4校舎の裏のフェンスが壊れていた様な。そんなことを考えながら靴紐を結ぶ。
キュ、と綺麗にリボンを結べたらドアを開けて走り出す。
学校と家の距離はそんなに無いから、15分くらいで着くはず。
いつも寄るたこ焼き屋を超えて、学校前に来た。
流石に正面突破は先生が居て出来ないから、第4校舎の方へ回る。
壊れているフェンスはすぐに見つかった。
少し屈んでフェンスを抜ける。
校舎は夕日の光を受けて赤色に染まっている。
こんな時に限って、昨日聞いた怖い話を思い出すんだよなぁ。
少し不気味だけれども戸惑っている暇はない。
何故か開いていた窓から入り、校舎を足音を立てないように歩く。
忍び足で、忍者になった気分で。
廊下はスムーズに移動できたけれども、ここで難関の第4校舎と第3校舎を繋ぐ渡り廊下がある。
残念なことに、今日は部活動も無く一斉下校。
それにこの渡り廊下のすぐ隣には職員室があって、先生達が忙しそうに動いているのが見える。
覚悟を決めて、屈んで忍び足で歩く。
私は忍者、私は忍者____!
半分くらい進んだ所で、足を止めた。
目の前には屈んでいるせいかいつもより高く見えるドア。
ここが開いたら全ておしまいだ。
さっきよりもずっと慎重に歩く。
問題だったドアを超えて、渡り廊下を渡り切り第三校舎に入った。
やった、成功だ。ミッションクリア!なんだ、私前世は忍者だったのかな?とか調子に乗った事が頭に浮かんでしまう。
少し浮かれて、勢い良く立ち上がった時だった。
職員室のドアが勢い良く開いた。
「そこにいるのは誰だ!」
まずい。これは随分とまずい状況になった。
聞き飽きたその声。これは間違いなく鬼山で有名な佐山だ。
校則に厳しくて、バレると間違いなく怒られる。
鬼山の声が聞こえた瞬間、私は弾かれたように走り出した。
もう忍者だとか忍び足だとか構ってられない。
兎に角バレたらまずいのだ。
鬼山の静止を掛ける声が聞こえてくる。
幸いにも名前を呼ばれないってことは顔は見られてないのだと思う。
それに私は制服を来ていないから、男女かなんて見分けがつかないだろう。
第三校舎は私の庭のようなもの。
英語で言うとマイガーデン。
2年間もずっと同じ校舎だったから目を瞑ってでも歩けると思う。
私は逃げ足だけは昔から速いし、鬼山はデカイ。
階段をヒョイ、ヒョイと二段飛ばしで上がる。
こうして私の青春の生死を掛けた戦いが幕を挙げた。
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