あの花を奪われた日のことを僕達は決して忘れない

こーた

第1話




「何故だ……」




その男はいつも自信に満ち溢れた顔をしていた。


自分こそがこの世界の覇者であるという自覚ゆえに。どんな窮地でも余裕の笑みを浮かべていた。




「何故、裏切った?なぜ、お前が……」



しかし、今の彼には焦燥の色しかいない。


炎に包まれた建物の中、圧倒的な窮地に立たされた信長〇ADOKAWAは震える声で目の前に立つ、己の部下の名前を呼ぶ。




「何故だ光秀メ〇ィアファ〇トリー!?」






天下統一ラノベ世界統一は目前だった。


信長〇ADOKAWAの野望を阻む敵はすべて蹴散らし、抵抗する国出版社はすべて制圧した筈だった。


残った敵は、ごくわずか。残党勢力とこちらとでは圧倒的な力の差があった。


自分が天下人になると、信長〇ADOKAWAは信じて疑っていなかった。


今日、自らの部下に裏切られたこの瞬間までは――――。




「……僕が信長様〇ADOKAWAグループの傘下に入ったのは、この時の為です」



部下である筈の光秀メ〇ィアファ〇トリーは、冷静にそう答えた。



「初めから裏切る予定で貴方の懐に入った」



彼が冷静沈着であるのはいつものことであった。


一つ違っていたのは、信長〇ADOKAWAを見下ろすその瞳の冷たさのみ。



あの娘あの花を奪った貴方に報復するために―――」



あの娘あの花……?」



なんのことを言っているのかわからず、聞き返した信長〇ADOKAWAを見た光秀メ〇ィアファ〇トリーは一瞬言葉に詰まり。



「ふっ、はははははは!! そうですか! 貴方にとって、あの娘あの花はすぐに忘れることが出来る小さな存在だったのですね」



大声で笑い始めた。思えば、光秀メ〇ィアファ〇トリーが声を出して笑った所をみたのは、これが初めてのことだった。


しかし、その笑いはすぐに収まり、地を這うような低い声で彼は告げた。



「貴方が、その野望の為に切り捨て、嬲り、見殺しにした幾多の作品の一つでしかないのですね……」


あの娘あの花は……明智家メ〇ィアファ〇トリーの最後の希望だった……それなのに貴方は強引に僕らからあの娘あの花を切り離し!」


「愛でること無く、見捨てた!! 貴方さえいなければ、あの娘あの花はもっと大きくなって、活躍できたはずなのに!!」


「貴方があの娘あの花の将来を……潰したのです」


「だから、僕は決意したのです……貴方の未来を奪い去ると……」




信長〇ADOKAWAにはあの娘あの花が誰だったか未だに思いだせない。


しかし、自分がかつて切り捨てた無数の人々商品の中に彼女がいたのは間違いないのだろう。


そして、それが光秀メ〇ィアファ〇トリーの謀反の理由であることも理解した。が……



「確かに……俺のやり方は多少強引だったかもしれない」


「でも、お前のことは重宝していたはずだ! 手厚く招き入れた!」



光秀メ〇ィアファ〇トリーが、信長の傘下〇ADOKAWAグループに入ったのは最近のことだった。


新参者である光秀メ〇ィアファ〇トリーの才能を買って、最短でここまで出世させたのは信長〇ADOKAWAなりの配慮だった。



「そう思っているのは貴方だけだ」


「確かに、貴方にはカリスマがある。この世界ラノベ業界の王は今現在あなた以外には考えられない」


「でも、その玉座を守るために、いくつの出版社侵略買収した? 何人の犠牲リストラを出した?」


「決して眩くはない。どす黒い人の欲望に塗れた穢れた玉座だ」



光秀メ〇ィアファ〇トリーの言葉に、信長〇ADOKAWAはかっとなって言い返す。



「でも、お前はその欲望塗れな玉座を狙っているんだろう? 俺に成り代わって、この世界ラノベ業界を制することが出来ると本当に思っているのか!?」


「たとえ、俺がここで倒れても、家康電〇が、秀吉富〇見が、勝家ファ〇通が……俺の仇を取るだろう」


「お前が玉座につくことはない!!」




「……僕はそんなものが欲しい訳じゃない」


「なに?」



予想外の言葉に信長〇ADOKAWAは面を食らう。



「言っただろう? 僕はただ貴方に報復したいだけだ……その後の天下に興味はない。織田家の家臣達〇ADOKAWAグループの残党でも、伊達G〇文庫でも毛利ホ〇ージャパンでも島津ガ〇ガでも、誰でもいい」


「僕はただ貴方の、天下統一ラノベ世界統一を目前にしながら、夢破れて絶望する顔を見れればそれでいいんだ」




その時、光秀メ〇ィアファ〇トリーが浮かべた笑みは、ゾクリとするほど美しくこの世のモノとは思えないほど恐ろしいものだった。



信長○ADOKAWAは一瞬怯んだが、しかし彼の富士山よりも高いプライドが、負けを認めなかった。




「良いだろう光秀メ〇ィアファ〇トリー……この俺を、本気で怒らせたこと……後悔させてやる……!」


「俺は倒れんぞ! 必ずこの世界ラノベ業界を制してみせる! どんな犠牲を払ってでも!! 突っ走る!!」


「それが俺の生き様だ!! 天下統一ラノベ業界一強するその時まで、俺は走り抜く!!」



「……そうでしたね。貴方は、誰よりもしぶとく、誰よりも速く、戦場を駆け抜けた。そして、その勢いに乗り貴方は、急成長を遂げた。でも、織田家〇ADOKAWAグループは大きくなり過ぎた。大きな光には必ず大きな影が出来る。貴方を慕う者を当然いるけれど、それ以上に敵は多い」


「貴方は、敵を作り過ぎた……もうこれ以上影が大きくなる前に、第二、第三のあの娘あの花を作らぬ為に……」


「僕も全力で貴方を潰します」


 

「来い! 光秀メ〇ィアファ〇トリー!!」


「さようなら……信長様○ADOKAWA貴方の王国〇ADOKAWAキングダムは今日、君主を喪い、崩壊する……!」



炎の渦が二人の周囲を取り巻き、建物が崩壊していく中。


二つの刃がぶつかり、鈍い音を立てた。







――――――

続く……かなぁ?

続きを書く前に、アカウント削除されそうな気がする……

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あの花を奪われた日のことを僕達は決して忘れない こーた @kouta1205

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