第4話 エリュシオンでの新たな1日"前編"

メンバー紹介が終わって1週間がたった。何でも、丁度私がこの世界に迷い込んできた時は1週間の休みがあったんだけれど、私のためにその休みをわざわざ削ってくれたんだとか。なんか、申し訳ない…。皆さんは気にしてないと言ってくれてたが…。


「さて、レイちゃん」

「はい、カムイさん」


で、今現在私はカムイさんに呼ばれて『執務室』と呼ばれる部屋にいる。


「ここでの生活、そろそろ慣れてきた?」

「お陰さまで、この世界のルールだったり、言葉や文化等はドクトルに学んでもらいました」

「そう、ドクトルも張り切ってるねー…んじゃあ、今日からぁ…仕事をしてもらいます♪」

「え、早速!?」

「いや、君みんなから色々教わってるんでしょ⁉」

「そうですけど…いきなりでちょっと…え、不安が一気に胃に来た…」

「まぁ、基本的には雑用、つまりはみんなの助手だったりお手伝いだったり、清掃員だったり色々だから頑張ってね♪あと、客ってね結構来たり来なかったりするからね、気楽にいって」

「よくそれでこのホテルやっていけてましたね…」

「気にしたら負けだよ」

「はぁ…」

「さ、そろそろ開く時間だ!頑張って働いて金を稼げー!」

「は、はい!わかりました‼」


唐突だなぁ、カムイさんの言葉は…まぁ、いつもの事だから気にしないで置こう。


「あ、レイちゃんレイちゃん」


呼び止められた。何だ?


「髪、結った方がいいよ。邪魔になるでしょ?」


助言だった。私は素直に感謝して、部屋を出る。道中、髪を結いながら。


その後、私は一度、ドクトル達がいる『事務所』というところにいった。

そこで"点呼"というものを行う為だそうだ。必ず行うらしい。

結果、全員いることを確認(私が知る限りのメンバーは。他にもいるけれど、このホテルに来るのは1ヶ月に2~3回だとか)。私たちは、持ち場にいった。

私の持ち場?雑用だから、特にないとの事。必要なとき、それぞれの先輩方の持ち場に行き、手伝いをしたりするらしい。それまでの間は、清掃だったり、お客様の案内、警備等を行っていくらしい(警備と聞かされたとき、ツキヒコさんに会えると考えたら胸が熱くなったのは内緒だ)。


っと、そろそろ開店の時間だ。


「えー、それでは、今日も何事もなく、元気にやっていきましょー!」

「「「「『「オー!」』」」」」


開店前はこれが恒例なんだとか。参加自由。のってものらなくてもOKだとか。毎度思うけど緩いな。


時間になった。ホテル"エリュシオン"が開店した。

だが、誰も来ない。一人として。こんなもんなのか?


「こんなもんだよー?ま、こっちとしては楽だからいいんだけどねー」


と言ったのはジンさん。そんなもんなのか。


「けど、来るときは来るから気を緩め…っと、お客さんだ。イラッシャイマセー!」

「イ、イラッシャイマセー!」


来た!私にとって最初のお客さんだ!

訪れたのは、如何にも重戦士と剣士、魔術師、狙撃手といった感じの人たちだった。


「久しぶりです!ジンさん!」

「いらっしゃい!クロウくんにトレガくん、マリアちゃんにステラちゃん!」

「皆の名前覚えてるんですか!?」

「そうだよ!忘れたことなんてないよー!」

「すごーい!」


な、なんか楽しそうだな…。


「あ、そうそう。君たちがいないときに新しい子が入ったんだー!ほら挨拶!」


わ、いきなり振られた!あ、挨拶!


「新しく入ることになりました、レイと申します‼よろしくお願いします!」


よし、噛まずに言えた!練習した甲斐があった!


「そうなんだ!自分は『クロウ』!見ての通り重戦士でこのパーティー、『ネオジェネレーションズ』のリーダーだ!よろしく!」

「私は『マリア』、剣士です。よろしくね、レイさん」

「僕は『ステラ』、狙撃手!僕っていってるけど、女だよ!これからよろしくー!」

「僕は『トレガ』、魔術師です。これから縁があるかもしれないですね。よろしく」


クロウ、マリア、ステラ、トレガ…よーし覚えた。覚えたぞー。


「よろしくお願いします。皆さん」

「よろしく!」「よろしくです!」「うん、よろしく!」「はーい、よろしくねー」


「終わったかなー?」

「あ、はい終わりました。すいません、待たせてしまい」

「ううん、問題ないよー♪んじゃあ、ここに名前と世界、もしくは地方の名前、滞在期間、所持している武器や使い魔、使用する部屋の希望等々を書いてねー」

「はーい!……よし、書きましたー」

「…うん、問題ないね♪使用する部屋は2人部屋を2つだね?じゃあこれ、505と506号室の部屋鍵だよ!」

「ありがとうございまーす!」

「んじゃあ、レイちゃん!案内よろしくー!」

「分かりました!それでは、ご案内致します」

「お願ーい!」


505と506号室は5階にある。そこまで行く途中、彼らと話を聞いた。


「自分等はな、『フレビリアズール』って言う世界から来たんだ。始めてきたときは混乱したなー」

「クエストの途中、森を通ったら、いきなりこの世界にやって来てたんですよ」

「でもでも、この島の人達スッゴい優しかったんだー!綺麗な温泉に美味しいご飯!豪華な部屋!今まで暮らしてきた宿屋とは比べほどにもならないほどだよー!」

「お陰さまでこの島の常連になってしまいました。もうここなしでは生きていけないほどです」


相当、この世界というか島が好きになったようだ。


「でも、流石にここにずっといるのはキツイと思ってね。泣く泣くここを出ようとしたんだ」

「あの時は本当に苦渋の決断でした…」

「ほんとー、もう来れないと思うと悲しくなったんだー…で、もー!」

「カムイさんが作ってくれたこの『永遠なるエターナル通行証パスポート』のお陰で、いつでもどこでもこの世界に来ることが出来るようになると聞いたときは皆で手を繋いではしゃぎましたね~」

「懐かしい~、あれってさー4年前の話だよねー」

「当時は…16だっけ?」

「そんくらーい…だよねー?」

「あの、初対面である私にそれを振られてもなんとも言えないのですが…」

「そうですよステラさん、それに当時僕達は16歳だよ」

「はーい」


という、面白い話だった。


さて、途中出てきた『永遠なるエターナル通行証パスポート』についての説明だ。

これは、『永遠なるエターナル世界ワールド』と別の世界を行き来するのに必要なものだ。私に分かりやすく言うと冒険者登録カードみたいなものだと、ドクトルはいう。

それがあれば、いつでもどこでもホテル"エリュシオン"や、『永遠なるエターナル世界ワールド』に来れると言う(但し、ホテルが休みの時は、エリュシオンに行けなく、永遠なる世界の方に行く)。

無くした場合は、カムイさんに言えばすぐ作ってくれる(無くなったら、この世界やホテルに来れないだの元いた世界に戻れないだのというややこしいになるため)。

これは、受け取る受け取らないの強調はしない。本人の意思で決めていいとの事だ(今までやってきた人は全員必ず受けとっていた)。


話を戻す。その後、私は『ネオジェネ(ネオジェネレーションズが長かったら『ネオジェネ』でいいと言われたので遠慮なく)』 メンバーを部屋に送り、分かっていると思っているが、注意事項(ドアは自動で鍵がしまるため、出るときは鍵を持ち出すこととかその他もろもろ)を説明し、場を後にした。


その後、私は道具(私の愛剣『メサイア』と、バックラー、デリーさん特製弁当)を持って、ゾーンさんとツキヒコさん の所に行き、警護をする時間になった。ので、現在、2人の所に向かってる最中である。


「んー?おぉー来たかーレイー」

「あ、レイちゃん!おっはよー」

「おはようございます‼」


無事、合流。私はホテルから呼ばれない限りは、14:00まで、警護をする時間である。

一応、昔いた世界での経験があるため、何事もない(勇者としての力が再び活躍すると思うと目頭が熱くなるな…)と思うが、私は新人。しばらくの間はツキヒコさんと行動する事になった。

はっきり言って、緊張する。心がドキドキする。顔が熱くなるのを感じる。


「大丈夫?顔赤いよ?」


心配されてしまった。


「イ、イエ!別にナニも!ツキヒコさんはどういった経緯でこの世界に来たんですか!?」


誤魔化すように話を反らした。不審がられると思ったが、ツキヒコさんはなにも感じなかったらしく、「僕がここに来た経緯かい?いいよ、話してあげる!」と綺麗な笑顔で言ってきた。なんか心が痛い…。


「僕がいた世界…いや、国は『ヤマト大帝国』っていう名前でね、僕はその国の新人兵だったんだ」


と、ツキヒコさんはこの世界に来た経緯を話した。見回りもしながら。


「ある時、自分は戦争に駆り出されてね、多くの戦士達と戦ってきた。その時、敵の奇襲にあって、僕以外皆死んじゃったんだ。僕は運よく森に逃げる事が出来た。それでも、生物として生まれてきた以上、お腹も空くし喉も乾く。まぁ、何が言いたいのかというと、餓死しかけたんだ。自分は」


笑顔が逆に怖いと感じたのは生まれて初めてかもしれない。


「でも自分には運があった。ある日、僕は森の中うぃさ迷ってたとき、崖から落ちてしまった。でも、それがこの世界に入るきっかけになった。ここの人達にはお世話になった。だから、恩返し的な意味で、自分はこれからも1人の武人として生きていって、この島とホテルを守る事を決めたんだ!」


やだ、この人、カッコいい。って!私はなに考えているんだ!


「あ」

「ん?どうしたんですか?」

「…お腹すいちゃった。エヘヘ…」


うん、可愛い。さっきのカッコ良さが抜けて、可愛くなった。っとと、平常心平常心。


「丁度お昼ですし、ゾーンさんと一緒にご飯食べましょう」

「やったー!」


もちろん、ゾーンさんと合流するまでの間、見回りもした。

無事、合流。


「異常はー?」

「「無しです」」

「オッケー、飯だ」

「「ヤッター!」」

「仲いいな…さっさとくっつきゃいいのに…」


ゾーンさんがなにかいったような気がするが気のせいだろう。うん、気のせいだ。

うん、デリーさんのカツレツサンド美味しい。ツキヒコさんもご満悦。ゾーンさんは…意外と綺麗に食べるな。


その後、14:00になったので、私はツキヒコさんとゾーンさんと別れて、ホテルに戻った。そのあと、なにをするのかというと…。


「ホラホラ!足ががら空きだよ!」

「うわったった!」

「好きあり!」

「なんの!」

「ふん!」

「うわー!」


…ソウマさんとサクラさんの管轄、『トレーニングルーム』で2人の手助けの予定なんだが…私いなくても良さそうな気が…。

あ、今ソウマさん達はネオジェネのメンバーと戦っている。ソウマさんの武器は…いつも手に持ってる杖だ。それを使って、クロウさんやステラさんの猛攻を軽くいなしている。サクラさんは、トレガさんの魔術攻撃をかわしつつ、反撃のチャンスをうかがっている。


「好きだらけですよ!レイさん!」

「!?マリアさん!?」


く、不意打ちか!だが!


「せい!」

「んな!?」

「伊達に鍛えてませんよ!」

「くっ!」


うん、戦うの、楽しい。やはり私は戦士(勇者)の血が流れてるんだなー…。


結果、ネオジェネメンバーはボロボロに負けた。あとで聞いたのだが、ソウマさんはカムイさんと互角、もしくはそれ以上の力を持ってるとか。サクラさんも同じ感じ。スゴい。


「アー!負けたー!」

「結局、1つも傷付けることが出来なかったよー…」

「レイさんも中々の強さでしたね…」

「うーん…まだまだ魔法の改良の余地ありかなぁ…?」

「そーだなー。クロウくんとマリアちゃんは剣の動きがちょいと単純だね。もっと次はこういく、それがダメならこうだ!っていう事前に次の攻撃のリズムを考えながら行動するように」

「「はーい…」」

「ステラちゃんはー…攻撃の方は無いけどー…直ぐに弓矢を補充できるように準備しとくのが今のところの課題かなー?」

「ふぁーい…」

「トレガ、お前はもう少し威力を上げるようにしろ。あと、次に使う魔法を常に組み立てておけ」

「わかりました、善処します」


と、一通りアドバイスを教わって貰ったところで…


「さて…おやつの時間だぞー!今日はバウムクーヘンだぞー!」

「ヤッター!って"ばうむくーへん"ってなにー?」

「見て食べるまでのお楽しみだ」

「お腹が空きました、早く食べに行きましょう。デリーさんが作ったのでしたら不味いということはまずあり得ませんので、安心して頂けます」

「そうだね~、楽しみだ」


ばうむくーへん…食べてみたい…。だが!今は仕事中だ!後でデリーさんにつくってもらおう‼


「ありがとね、レイちゃん。お陰で助かったよ♪」

「いえ、問題ありません」

「あ、レイ。お前に聞きたいことが有るんだ」

「?何ですかサクラさん?」


「単刀直入に言う。お前…ツキヒコのこと好きだな?」


「「「「「…!?」」」」」


え、す、好き?私が?ツキヒコさんのことが!?え、え!?ってかニュージェネのメンバーも驚いている。そりゃ驚くか!


「え、待ってレイちゃん。ツキヒコくんの事好きなんだ!」

「い、いや、確かに胸が熱くはなったりしますけど!」

「意外ですわ…」

「そこまでですか!?」

「へー!そーなんだー!」

「いや、わかんないです‼そうなのかもしれないですけれども!!」

「いくら戦士といえどやはり女性、恋もしますか…子供が楽しみです」

「こ、子供ですか!?ま、まだ自分は結婚できる年齢じゃないですので!」

「うん、まってトレガくん。はやい、いくらなんでも子供ははやい。まずは式の準備でしょ?」

「その前にデートの準備とか指輪の準備とかもあるぞ?」

「いや、ですからぁ…アーもう!ツッコミが追い付きません!」


色々好き勝手言いまくるなぁ!この夫婦は!


「まぁ、なんだ。告白は早めにしとかないと誰かに取られるぞ」

「まだしませんよ!」

「"まだ"ってことはいつかはするってことだよねー、楽しみだ♪」

「そーゆー意味じゃあありませんよ!」


結局、この時間はみんなにいじられて終わった。うう、一気に疲労が…。


「あ、あの…だ、大丈夫です…か?疲れてるように見えますけど…?」


声をかけられたので、振りかえると、マーシュちゃんがいた。


「あ、こんにちは…若干疲れてます。バトルマスターのお陰で」

「あ、そうですか…で、でしたら、これ飲みますか?私特製のドリンクです」

「あ、ありがとうございます…。………な、なんか独特な味がしますね…?」

「フフ、"良薬口に苦し"、です!」

「何ですか?それ?」

「苦いほど良く効くってことです」

「なるほどー。あ、この瓶後で洗って返しますね」

「ありがとうございます、助かります。あ、この後、私畑に行くんですけど、一緒に行きますか?」

「行きます!どんな物を育てているのか気になります!」

「では、一緒に行きましょう。後でデリーさんとドクトルも合流しますので。あと、色々手伝いをしてもらいますが、いいですか?」

「大丈夫です!ドリンク効果かわからないですけど、元気いっぱいですので!」

「フフフ♪では行きましょうか!」

「はい!」


そして私はマーシュさんと一緒にマーシュさんの畑に行くことになった。どんな所なのか、なにを育てているのか、そう考えると、今からすごい楽しみだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る