第3話 " エリュシオン"の個性的なメンバーについて

あの騒がしくも楽しい夜がすぎた。あの後、カムイさんが私のために部屋を用意してくれたのだ。一人部屋というのは、どこかワクワクするものがあるな。

新しく与えられた部屋で寝て、起きたときは6:30だった。いつも起きる時間と比べたら少し遅いな…。

ア!そうだ!今日はこのホテルの人々に会える日だった!つまりは私の先輩にあたるわけだ。どんな人なのか、どんな性格なのか、今から楽しみだ♪

っと、その前に服装を整えなければ話にならんな。

え~と確かこの『クローゼット』とやらに働くのに必要な服があるとカムイさんがいってたが…アーあったあった。コレは…『キモノ』?何故キモノなのだろうか…?だが、『郷に入っては郷に従え』ということわざ(最近知った)があるからな。着ようではないか。

うん、見た目に似合わず動きやすいな。丁度いいサイズだし。柄は、リンゴの木や花が彩られていて、可愛いものになっている。イイナー、コレ。

そんなことを考えていると、入り口からコンコンという音がした。


「レイちゃーん!起きたー?」


ドクトルさんだった。


「起きてまーす!」

「早くおいでよー!君にとっては先輩に当たる人たちが待ってるんだからさー!」

「わかりましたー!今いきまーす‼」


さて!どんな人たちなのか見せてもらいますよ!


そんな心意気を持ちながら、ドクトルと共に、『ホール』という場所にいった。

中はかなり広い。食堂よりはすごい広い。

ふと、真ん中に目をうつすと、カムイさんを筆頭に多くの人たちがいた。

ア、アレが私の先輩に当たる人たちか…き、緊張してきた…。粗相とかしないようにしないと…。


「カムイ、コイツか?"アイツ"みたいにここで働きたいっていった物好きは?」


そんな声が聞こえて、その方向に目を向けると、金髪で、眼の中に黒い丸が4つ存在し、眼の下に濃いクマができていて、クモの巣が彩られたキモノを来た青年がいた。歳は私と同じかな…?


「そうだ、君にとっては後輩に当たるからな、仲良く行けよ?ホラホラ、自己紹介自己紹介!」

「分かった分かった。アー…俺は『コガネ』っていうものだ。"土蜘蛛"っていう妖怪だ。よろしく」

「よろしくお願いします‼コガネさん!早速ですけど…妖怪って…?」

「君の世界でいう、魔物と似て非なる存在だよ。土蜘蛛は土に関してはエキスパートだ。あと、糸を出すから補強作業するときとか楽だよー。あとは杖術っていう武術の達人だよ、コガネは」

「そーいうこった。俺は主に"工房長"…このホテルの地下に工房っつー…ホテルで過ごすために必要なアイテムだったり、お土産っつー思い出品を作ったりする所のリーダーを勤めている。まぁ、よろしくな、レイ…とやら」

「よろしくです!コガネさん!」

「じゃあ次は僕だねー♪」


コガネさんの自己紹介が終わったら、今度は黒い眼、黒い長髪を1つにまとめ、風が彩られたキモノを着ている。手には葉っぱみたいな形の団扇と思われしき物を持っていた。


「僕は『ジン』っていうんだー!"烏天狗"っていう素早さ抜群!風のエキスパートの妖怪だー!」

「よろしくです!ジンさん!」

「よろしく!あ、僕は"番頭"っていう、君に分かりやすくいうと、冒険者組合キルドの受付みたいな役割だよー!笑顔大事!あと、多分君と話す機会は多いかもしれないねー」

「そうですか。わかりました!」

「じゃあ、よろしくー!」

「よろしくです!」

「次は自分…か?」


次の人は…カムイさんと同じく頭にタオルを巻いている。タオルからはみ出る髪の毛の色は水色、横髪を髪留めで結んでいる。キモノを着ており、波が彩られている。


「自分の名は『ナガレ』だ。男湯の"湯守り"…男湯の温泉を管理する仕事を専門にする"河童"だ。河童は水の扱いに長けてるから、水関連は任せろ」

「よろしくお願いします!ナガレさん!ところで…」

「うん?なんだ?」

「女湯の"湯守り"は一体…?」

「アァ、俺の後ろ」

「うん?…えぇ!?」


驚いた。なぜかって?スライムがいたからだ。


「あ、アレが…?」

「アァ、そうだ。『ライム』という名だ。見ての通りスライムだ。けどスライムとしては珍しく、喋ることや人形ヒトガタになることが可能だ。ライム、挨拶してやれ」

『…よろしくー』

「喋った!?」

「さっき喋るっていったばっかだが?」

「あ、すいません」

「大丈夫だ…あ、そうそう、ライムは俺の嫁だ」

「結婚してるんですか!?」

「『うん』」

「…そうですか、あ、これからよろしくです。ナガレさん、ライムさん」

「おう」『よろしく…ね?』

「順調に自己紹介が進んでるねー♪」

「妖怪メンバーが続いてるから次は…」

「…俺か?」

「だね」


次の人は…おお、狐の獣人かな?黒い狐の耳と尻尾が生えており、眼はキリッとしていて、炎が彩られたキモノを着ていた。


「自分は『レン』というものだ…。"妖狐"という妖しだ…。"お帳場"という金を管理する仕事を専門に行っている…。あとは…自分は炎を操れるから…炎が必要になったら呼んでも構わない…」

「わかりました、これからお願いします。レンさん!」

「ん…よろしく…あと…」

「はい?」

「俺たちは500年以上は生きてるから…分かんないことがあったら…聞いても構わない…」

「わ、わかりました…」


これで四人目…でも全員妖怪という種族だからなぁ…人はいるのかな(ドクトルとデリーさん以外に)?それにしても、妖怪って長命なんだなぁ…。


「あ、あの…」

「ん?」


声をかけられた方向に目を向けると…キ、キノコ(色は緑)?を頭に被り、清楚な『ワンピース』という服(後でドクトルから教わった)を着ている少女がいた。


「わ、私は"マタンゴ"の『マーシュ』といいます‼お、主に"食料管理"の仕事に就いています‼こ、これからよろしくお願いしましゅ!!」


この時、メンバー全員が(噛んだ…)と思った。本人は噛んだ事に気づいていない。


「あ、ああこちらこそ、よろしくお願いします」


マタンゴかぁ…いかん、キノコ食べたくなってきた。


「レイちゃん、よだれ出てる」

「え?あ!」


いかん、気を緩んでしまっていた…。


「えーと…あと紹介してないのはー…」

「た、ただいま戻りましたぁ~」


と、カムイさんが確認しようとしたら、ホールの入り口から1人の青年が走ってきた。

容姿は、髪の毛と眼が白く、頭に黒く、月の飾りがついたかぶとを被っており、月と雲、滝が彩られたキモノに白いハカマを着て、背中には…確か"ナギナタ"と言うんだっけか?それを背負って来た。


「アー、"ツキヒコ"くーん!丁度いい!君の後輩だよ!」


あの人はツキヒコという人なのか。よし、覚えた。


「すいません、遅れてしまい…僕は"ツキヒコ"って言います。この島の"見回り役"をやっていて、この世界に来てまだ半年もたってないんだー。これからよろしくね~♪」

「あ、はい!自分はレイといいます‼これからよろしくお願いします‼ツキヒコさん!」


と、お互いに握手をしたのだが…何故だろう、なんか恥ずかしくなった。さっきも、男と人と握手したのに…心臓がバクバクいってる。何故だ?


「どうしたの?顔赤いよ?」


いつの間にか、ツキヒコさんが目の前まで来て、顔を除き混んでいた。あ、あの!息が、息があたりそうです!


「ツ、ツキヒコさん!顔が!顔が近いです‼」

「アァ、ゴメン!!」


こ、こんなの、心臓が幾つあっても足りなくなりそう…


「オットー?これはー?」

「ふむ…なるほどな…」


と、何か創真さんとサクラさんが何かを話していた。


「あの、お二人は何を話して…?」

「特に…ネェ?」

「ああ、特になにもないぞ…ナァ?」


ホントに何を話してんだろうか…?


「さてさて、初々しいリア充のごとくの新人達の挨拶は終わったから、次は…誰だ?」

「リア充ってなんですか」

「ドクトルにでも聞いて。あといたっけ?」

「え~と、確か警備長の…」


そんな会話を聞いてたら、入り口付近から禍々しい気配を感じた。振り向いたら…


「俺ならぁ、ここにいるぜぇ?支配人オーナー?」


そこにいたのは…紛れもない、不死人アンデッドが存在していた。

頭を緑のフードで隠しているが、口から見える牙や、赤い眼、鋭い爪、 体から少し漂う死臭…それら全てアンデッドである証拠だ。


私はとっさに体を構えた、が…。


「…おい、"ゾーン"、新人がお前の事斬ろうとしてるぞ…?」

「いきなり現れる癖、どうにかしたら~?」


と、レンさんとソウマさんが普通にアンデッドに話しかけてきた。え、あの、アンデッドって危険なんじゃあ…?


「嬢ちゃぁん…別に俺ぁ、人をとって喰おうなんざしねぇぜぇ…?」


そ、そういわれてもだなぁ…


「そーそー、こいつアンデッドの癖に人喰うのが大嫌いだから安心しな♪」

「その代わり、太陽の光に強い耐性持ってるから、この島全体の"警備長"を担当してるんだよ。いざというとき、盾にもなるからね♪」


カムイさん、ソウマさん、説明ありがとうございます。お陰で整理が少し落ち着きました。


「これで、今んとこは終了かな?」

「他にもいるっちゃあいるけど、都合上、行けないってのが多いからねぇ~」

「次回また機会があればしようぜ」


他にもいるのか。でも今はいないようだ。では今いるメンバーで全員か。


「…にしても、結構いますけど、私の同僚…つまり、同じ雑用っているんですか?」


ふと、そう思ったので、カムイさんにそう聞いてみる。


「ん?あぁ、雑用…というより、仲居さん…まぁ、スタッフは大体俺の"眷族"で間に合ってる」


眷族?何ですかそれは…?と聞こうと思ったら、目の前を黒と白の霊っぽいのが辺りを漂っていた。一瞬驚いたが、危害は無さそうなので、放置しといた。


「適応力高くなったねぇ~…ツキヒコくん最初見て驚いてたのに…」

「ちょ、カムイさん!後輩にそんな事言わないでくださいよ!」


ヤバい、恥ずかしがってるツキヒコさんが可愛く感じてしまう。


「ホラァ、カムイさんのせいで、後輩ちゃん笑っちゃってるじゃないですか!」

「ゴメンゴメン!」


しばらくツキヒコさんをカムイさんが宥めてるのを見ながら、ドクトルからこのホテルのルールだの、仕事についてだの色々教えてもらった。

しばらくして、話が終わったらしい、カムイさんがやってきた。


「さて…今周りに浮いてる白と黒が俺の眷族、『こくよう』と『はくりん』だ。」


そういう名前なのか。


「基本、喋らないがこっちの言ってることは分かるから、自由に聞いたり、手伝わせたりしていいからね?」

「わかりました」

「ソウマとサクラ。ドクトルとデリーの自己紹介は…しなくてもいいか」

「あ、ソウマさんとサクラさんは分かるんですけど、ドクトルとデリーさんの担当って?」

「ドクトルが医者で科学者…科学者っていうのは色々研究したり発明する人の事で…デリーさんは料理長という担当だ」

「了解です。あ、あとツキヒコさんだけなんですか?ここで働きたいっていったのは?」

「そう、ここにいるツキヒコ以外のメンバーは自分が誘ったり、勝手に担当させたりしてるんだ」

「なるほど、通りで…」

「さて、じゃあ今んとこのメンバー紹介は終わりだ。この後は…」

「この後は?」

「飯だ」


ずっこけた。いきなりの飯でずっこけた。


「ちょ、大丈夫かい!?」

「あ…はい」


うう、何故だ、ツキヒコさんにずっこけた所を見られたと思うと結構恥ずかしく思える…。


「まぁまぁ、カムイがアホなのはいつもの事だから」

「創真てめぇ、減給させんぞ」

「させないぞ…?」

「レン、そこで突っ込んじゃ駄目だ。今のはノってあげるところ。じゃなきゃカムイが可愛そうだろ」

「…?」

「ツッコミをわかってらっしゃらない」

「まぁ、いつもの事だからなぁ~…、レンのノリの悪さはナァ~…キシシシシシ」

「…相変わらず変な笑い方すんな、ゾーンは」

「君も相変わらず眼の下のクマすごいよ?」

「ほっとけジン」

『みんな…楽しそう』

「だな」

「あーお腹すいた~、デリー、今日の献立は~?」

「アァ、今から作るネ!」

「わ、私も手伝います!」

「お願いするネ!マーシュちゃん!」

「は、はい!」

「…いつものホテルの空気になったなぁ…」

「うむ、賑やかなのは良いことだ」

「レイちゃん」

「はい!」

「これから頑張ってね!俺たちも出来るだけサポートするから(恋のサポートも…)」

「私も手伝うぞ(恋愛に関して…)」

「…なんか企んでません?」

「「なんの事かな?」」

「…フフ」

「みんなー!そろそろ朝ごはんの時間ネー!」

「待ってました!」

『ごっはん♪ごっはん♪』

「…いい匂いだぁ…」

「今日の献立はなにかなー?」


自己紹介の時間は終わり…かな?仕事は来週からだそうだ。それまでこの世界について勉強せねば。


「レイちゃん、一緒にご飯食べよ?」

「ヘア!?ア、ハイ!」


…それとツキヒコさんと話す度に起きるこの気持ちについても調べなければならんな…色々大変だな。頑張らなければ…。

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