エピローグ
何があったのかは新聞もテレビも、果ては当事者である俺達にさえ解らなかった。
神隠しに遭った俺と雪奈は、全てを思い出した町の皆によって四日後に山の中から見つけ出され、そして再びの入院を経て日常に帰された。
代わりなのか何なのか、俺からは守りたいと思った奴を守る……加護を与えるような
それだけが対価なのか? そう不思議に思いはしたが、白蛇様の祠は消えたために伺いを立てることは不可能だった。
雪奈曰く、白蛇様がこの町に居たのは気紛れだったらしい。それは全てただの暇潰しで、興味のある願いだけを叶えていた、ということらしい。
それで興味があったから7才だった俺の願いと、俺を守ろうとした雪奈の願い、そして最後に雪奈を忘れられたくないという俺の願いを叶えたらしい。
因にだが、俺たち以外で願いを叶えてもらった人は居ない。その事を考えると感謝より何よりも、恐怖が先に出てくる。
もし、白蛇様の気紛れが無かったら……一度でもそれがなかったら、俺は記憶を失うか、雪奈を忘れるかしていたと思う。
“白蛇様”の力は強い。
それ故に、気紛れなどと言うものは期待するだけ無駄なはずだ。むしろ絶望するだけ、叶わなかったときに。
だけど俺は今、ここにいる。雪奈の記憶と、その存在を隣にして。
白蛇様への感謝の気持ちはある。だから、出来るだけ俺はあの出来事を忘れないよう努め、そして日常を噛み締めるようにしている。
まあそれが恩返しになるのかは解らないけどな。
「ねえ……」
「……ん」
「明日も、楽しみだね」
「……そうだな。じゃあ明日が早く来るように……眠ろうか」
眠りたく無い @luft
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