お前がしてくれたこと

 ありがとう、なんて言葉をお前に渡すつもりはない。馬鹿野郎。お前は大馬鹿野郎だ。










 俺が奇病を患ったのは自業自得だ、というのが正直な感想だった。

 親父は言わなかったがそれは紛れもない事実。“白蛇様”に幼い頃掛けた、分不相応なあの願のせい。誰も信じないであろうその事実から、俺は目を背けるつもりはない。


 この町に伝わる古い伝承に、7歳の俺は願を掛けた。


『しろへびさましろへびさま、もしおれがだれかをたすけたいっておもったら、それをぜんぶかなえてください。まもりたいってひとを、みんなみんなたすけてください。おれのぜんぶを10ねんあとにあげるから、これをぜったい、ぜったいにかなえてください』


 理由は……未だ思い出せないな。でも、その事実は最初の頃から思い出せた。




 あぁそうだな……俺の願いは尽く叶ったんだな!

 10年後のその時、記憶を失い始めるまでは!


 日々消えていく記憶。忘れたことすら忘れていく。……そして、俺は全てを確かに白蛇様に捧げ尽くしたんだろうな。

 親父の話じゃ、俺は廃人同然になったらしいし。


 お前だけは認めなかったって……諦めなかったんだってな。その話を俺から聞いたのを思い出して、直ぐ様あの山の祠に行って……そして、願を掛けたんだってな。俺と同じように、全てを捧げることを対価にして。

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