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「美穂ー!」
後ろから声がした。振り返ると制服姿の茜がこちらに向かって走って来た。茜とは小学校からの付き合いで、高校生になった今でも仲のいい付き合いをしている。
「おはよう、茜」
「おはよー!ねえ、今日英語の小テストあるって知ってた?あたし昨日ノート見るまで気づかなくてさー!大丈夫かな?」
「大丈夫でしょ。高橋先生の小テストは基礎問題ばっかりだし、もし大した点数取れなくても小テストなんだから、気にする必要ないよ」
「だよね!さすが美穂、頼りになる!…っていうか、美穂って帰国子女なんだもんね?美穂に聞いちゃダメじゃん…」
そう、茜とは小学生のころからの付き合いといったが、実質は小学5年生のころからの付き合いだ。それまでは両親の仕事の都合でイギリスに滞在していた。その影響で多少の英語は喋れるし、今だってテレビ番組は英語の字幕で見ることが多い。
「そんなことないよ。私は確かに何年かイギリスにいたけど、日常会話で使う言葉と、学校で習うようなしっかりした文法の言葉とは違うこともあるし。勉強しなきゃいい点数は取れないよ」
「美穂をもってしても、そうでもしなきゃいい点数取れないってこと?じゃああたし、無理じゃん…」
茜はそう言い落ち込んだようにしながら、校門をくぐった。私は隣でくすくす笑いながら茜と一緒に教室に向かった。
「あー授業終わった!」
茜が背伸びをしながらこちらを見ていた。
「ね、美穂!このあとひま?今日あたし部活ないからさ、どっか行かない?」
「いいよ、私も予定ないし。せっかくだから、駅の近くの、この前オープンしたシュークリーム屋さんでも行く?」
「いいね、そうしよ!」
荷物をまとめて教室を出ようとするーーと、
「おい、茜!お前どこ行くんだよ」
茜の後ろにいた大樹くんが茜を呼び止めた。
「どこって、美穂とシュークリーム屋さん行くの!」
「シュークリームー?お前そんなもの食べるのかよ」
「なに食べたっていいでしょーばか大樹!」
「なんだと!」
「まあまあ、どうせなら大樹くんも一緒に行く?そっちの方が茜も喜ぶし」
「はあ!?だ、誰がこんなやつと喜ぶって?」
「ほんとだな、俺から願い下げだよ!こんなやつ!…ごめんね、鈴木さん、気遣わせちゃって」
「うわ、全然態度違うじゃん!なによ、美穂には優しくして!」
「当たり前だろ、お前と鈴木さんじゃ全然違うんだよ!」
「なにをう!」
「まあまあ…ね、大樹くん、私も顔をたてると思って。一緒に来てくれない?」
「まあ、鈴木さんがそういうなら…」
「…ふん、邪魔しないでよね!」
「しねーよ!…あーあ、何でクラスメイトの中でもこんなに差があるかねえ…」
「もーうるさいな!美穂行こう!」
「ふふ、はいはい」
「なに笑ってんの!」
茜はぷりぷりしながら私の手をひいた。この大樹くんと茜は幼稚園からの幼馴染みで、見ての通り喧嘩ばかりだけど、本当はとても仲がいい。それにお互いにきっと好きあってる。その証拠に、私は二人から恋愛相談をされる。もちろん、茜と大樹くんから。本当にこの二人には手を焼くばかり。でも、それがすごく楽しい。
「あー、食べた食べた!」
「そんなに食べて、夕飯は大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫、すぐお腹空いちゃうから!」
「ほんと、昔から大食いだよな」
「大樹に言われたくない!」
「俺は男だけど、お前は女なんだからちょっとは遠慮しろよな」
「女とか関係ないでしょー!いいもん、ご飯大好きな人と結婚するもん!」
「そういう問題かよ…」
こんな会話を繰り広げながら、店が立ち並ぶ歩道を三人で歩く。最近の日課。
ふと、白い車が脇を通った。
「じゃあ、私は拠るところがあるから、ここで!」
「え、美穂、ここでバイバイ?」
「そう、ごめんね、買おうとしてたものがあって、今思い出したの」
「そっかーじゃあ、また来週?」
「そうね、今日は金曜日だから…またね!茜、大樹くん」
「また来週ね、美穂!」
「じゃあまた、鈴木さん」
あの素直じゃない二人を残すのは少しためらいもあるけど、まあ大丈夫だろうと思い、角を曲がった。やっぱり、二人で帰る方が話もしやすいだろうし?
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