裏設定
男は、塔の中に封印されている。
封印した者達に、男を殺すだけの力はなく、ただ、封印しただけで力尽きた。
男が何かをやらかしたわけではない。
ただ、周りの者達よりも力が強かっただけである。魔力においても、腕力においても。
彼は、封印されないように抵抗することもできたが、それをしなかった。暴れたら、封印に手を貸すものが傷つくから。
彼を封印をしたものの中に記憶に干渉できるものがいた。
封印したことを逆恨みされ、封印が解けた時に復讐されることを恐れた者達によって、彼の記憶は消され、夢の中を彷徨っていた。
彼は、優れた魔力により、食事をせずとも、空気から魔力を取り入れ生き延びることができ、年をとることはなかった。
それが、幸か不幸かはわからない。おかげで、彼は一人孤独な時間を永遠に過ごすことになってしまったのだから。
彼の封印を解くには、塔の外側から、封印を解くという意識を持って扉を壊さねばならない。
しかし、封印した者達の子孫には、何が封印されているのかが正確には伝わっていなかった。
封印されているのだから、何か恐ろしいものなのだろうという、憶測が憶測を呼び、塔に近寄るものすらも存在しなかった。
それに、壊すべき扉は塔には存在しなかった。
そんな中、彼の意識が覚醒した日、記憶を封印していた一族を含むすべての人類は一晩にして消滅した。
何が起こったのかを理解したものはいなかっただろう。
理解をする隙などなく、一瞬にして消え去ったのだから。
幸か不幸か、男は特別な封印を施されていた。そのおかげで消滅を免れることになる。
男を封印した子孫、男の宿敵はその他の人類とともに全滅した。彼の復讐相手は消えたのだ。彼の、意識は正常に戻ったが、失われた記憶が戻ることはなかった。
彼の不幸は、彼を封印から解き放つものがいなくなったことである。
彼は永遠に一人、何もない中で生きていくのだ。
孤独 露薫 @tsuyu
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