ぼくはカカシ

小野 大介

本文

 ぼくはカカシ。

 でもね、実は魔物なんだ。

 魔王様に作られた。

 もうずっと前のことさ。

 人間を殺すのが、ぼくの使命。

 でも、嫌なんだ。

 そんな恐ろしいことはしたくない。

 だって、人間は優しいんだ。

 道に捨てられていたぼくを拾ってくれた。

 手入れをしてくれて、

 新しい服を着せてくれて、

 見晴らしの良い畑に立ててくれた。

 カカシとして使ってくれたんだ。

 赤いマフラーと麦わら帽子は、ぼくのお気に入りさ。

 みんな、良い人たちなんだ。

 だから、ぼくは殺さない。

 友達になりたいんだ。

 でもね、ダメだったよ。

 勇気を出して話しかけてみたんだ。

 おはよう!

 するとね、怖がられた。

 魔物だと叫ばれて、逃げられた。

 すぐに大勢の人たちがやってきたよ。

 みんな、すごく怖い顔をしていた。

 ぼくを畑から引き抜き、燃やそうとした。

 やめて!

 そう叫んだけど、やめてくれなかった。

 ぼくは燃やされたくなかった。

 死にたくなかった。

 だから、呪文を唱えた。

 唱えてはいけない呪文を。

 イナゴの大群がやってきた。

 悪魔のイナゴ。

 みんなを襲い、村を飲み込んだ。

 世界が真っ暗になった。

 真っ暗闇さ。

 気づけば、誰もいなかった。

 ぼくだけだった。

 また、ひとり。

 また、ひとりぼっち……。


 ぼくは人間が好きなんだ。

 人間と友達になりたいんだ。

 だから、ぼくは旅に出ることにした。

 友達になってくれる人間を探す旅さ。

 世界のどこかに、きっといる。

 いるはず。

 そう信じて、また旅に出る。


【完】

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ぼくはカカシ 小野 大介 @rusyerufausuto1733

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