第8話

 瞬間的に、意識が切れたのだろうか。武史は口の中に溜まった血を吐き出した。


 二人の距離は、再び離れている。


 うなり声をあげるタウ。背中から何本もの骨のような塊が突き出すと、それは翼となって広がり、上下に地面を扇ぐ。タウが飛翔した。


 一気に高度を上げながら、上空から無数の光球を放つ。光球は弾丸のような速さで落ち、床に着弾するやいなや爆発した。何度も、何度も爆発が起こり、校舎全体が揺れる。コンクリートの床が砕け、辺り一帯を白い煙が埋め尽くした。


 その時、武史は屋上から飛び降り、爆発を免れていた。


「派手だね、タウは」


 建物の影から、タウの位置を確認する。暗い空の、かなり上空に留まっているのが見えた。


 決着をつけるつもりなのだろう。武史にとっても望む所だった。


 ツナギの胸ポケットから小さな白い玉を取り出すと、親指と人差し指で摘んで持ち、眉間にかざす。狙いを定め、息を止める。摘んでいた白い玉が輝き、周囲全てを飲み込むような、強烈な光が放たれた。


 光の柱が天に向かって昇っていく。武史も思わず、目を閉じる。瞼越しでも、光を閉ざすことはできない。


 スローモーションのような一瞬の時が経ち、真っ白になった視界が、急速に戻ると、タウの姿はどこにもなかった。


 戦いの記憶を故郷の仲間と共有するために、タウが放った光球が、きっとどこかで漂っているだろう。光球は一度、主から離れると、最初の役割を変えることなく全うし続けるからだ。たいした時間稼ぎにならないかもしれないが、それも回収しなければならない。


 武史は静かに息を吐いた。

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