第5話
確かに、空から何かが落ちた。山は抉られ、30メートルほどのクレーターができ、周囲の木は高温によって焼き焦げ、あるいは衝撃によって薙ぎ倒されていた。けれど中心地にあるはずの隕石は、見つからなかった。
接近する隕石の存在を、各国の天文台は事前に確認できていなかったという。三鷹の国立天文台では、大気圏内に突如、エネルギーの塊が発生したとも発表していた。
隕石ではないとしたら、一体何なのか。もし、これが都市部や住宅地に落ちたならと、テレビでは連日、特集が組まれた。
「おはようございます」
川瀬蒼の声が響いた。
「おはよう」
パソコンに向かっていた鳴海武史が、振り向き、微笑む。8時。まだ始業まで1時間以上あるため、オフィスには蒼と武史の二人しかいなかった。
「いつも早いですね」
「ちょっとね」
武史のデスクにある雑誌を見て、蒼が驚いたように言う。
「鳴海さん、結構、オカルト好きなんですか?」
「隣町で起きたんだ、普通の好奇心だよ」
「異星人による、エネルギー波攻撃の謎とかですよね。実は私も、ちょっと興味があるんです」
「そうなの? 川瀬さんなら、怖がって見ないと思ってたよ」
川瀬は笑って「意外でしょう?」と答える。
「こんな話があるんです。隕石か何かが落ちた後、万が一に備えて消防庁のヘリが現場に向かって飛んだとき、例の光の玉が数百、地上の遙か上空を飛んでいたらしいんです。あの光の玉を捕まえたら、高額で買い取ってもらえるらしいですし、私も探しに行こうかなぁ」
「止めておいた方がいいよ。宇宙人に連れて行かれるよ」
武史は険しい表情で、呟くように言った。笑いを堪えきれずに、吹き出す蒼。
「じゃあ、一緒に行って、守ってくださいよ」
「やだよ、めんどくさい。さぁ、仕事しよう」
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