第2話 離してごらん

 霊感はゼロですが、『憑依体質』だと言われたことがあります。

 とてつもなく憑依体質で、「恐ろしいくらい乗せている」と言われました。


 何度かそう言われました。

 それを素直に受け入れられる体験も記憶もあります。


 声はけっこう聞こえます。

 頭の後ろ辺りから、聞こえてきます。


 声の発生源のイメージは黒が多いです。

 霊感はないのでわかりません。


 誰が何のために喋っているのかわかりません。

 はっきりと聞こえてくる言葉の意味は、自分で後付けしてしまうのかもしれません。



***



 前回の話よりも、もう少し大きくなって、お手伝いをし始めた頃。祖母に使い終えたすり鉢を、母のところに持って行くように言われました。

 二世帯住宅で台所が二か所にありました。


「絶対に手を離したらダメですよ」

 笑顔の祖母に、そう言われました。


 お手伝いをしようと張り切っていた私は、嬉しくてしかたがありません。

 そして、家の中にある小さめの階段の一番上に来ました。


―― 手を離してごらん。


という声がしました。

 後ろから聞こえてきました。


 周りに誰もいません。

 振り向くことはしませんでした。


 人がいないことはわかっていました。

 自分が何をしていたのかわからなくなりました。


 何をするんだっけ? と思っていると、


―― 手を離すんだよ。


 命令するような感じではありませんでした。

 静かな淡々とした声でした。


 ああ、そうか。と思って、私は手を離しました。

 階段を転げ落ちたすり鉢は、ガチャンと割れました。




 こういうことが、2~3回ありました。

 声が聞こえてきたのは、家の南東付近が多かったです。


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