『憑依体質』と言われましたが霊感はゼロなので何が起きているのかわからない話

玄栖佳純

第1話 聞こえた

 私の家は、霊などの不思議な体験とは無縁の、普通の家です。


 気配などを感じて「オバケ、怖いよう」と言うと、

「そんなものいません」と言われます。


 それが当たり前で、目に見えない物は存在しないという環境で育ちました。

 ただ、小さい頃から不思議な体験はありました。


 小さい子供の勘違いだったのかもしれません。

 記憶違いということもあります。


 でも、不思議だと思ったので、書いてみます。



***



 母から聞いた話とあやふやな記憶と合わせてお伝えしてみます。

 小さい頃の私はほとんどしゃべらず、ひとりでいろいろやらかす子供だったそうです。


 私は蚊取り線香をじっと見つめていました。

 緑色の渦巻きのです。


 30巻のカンの上に燃えない綿状の物が敷いてあって、蚊取り線香を乗せて燃やすタイプでした。煙が上に行くように、大きく開いた蓋があります。


 そこに火がついた蚊取り線香がセットしてあって、蚊を殺すための白い煙がゆっくりと上がっています。


 私はそれに魅入っていました。

 じっとじっと、見つめていました。


 白い煙と、白い灰、そして緑色の渦巻きの先の赤い光を、じっーと見つめていました。


―― 触ってごらん。


 そんな声がしたような気がしました。




 母は2階にいたそうです。

 近所の子供が泣いていると思ったそうです。


 いつまで経っても泣き止む様子がなかったので、慰めてあげようと階下に降りてくると、やけに声が近く、私が蚊取り線香に指を突っ込んで泣いていたのを見つけたそうです。


 その火傷やけどの痕は、今も残っています。

 そして、いまだに火に触ろうとするクセがあります。


 熱いのでやりませんが。


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