第4話 なぜマラソン中にハチが刺すのか

 世間に流れる「ハチに刺された」関連のニュースには「マラソン中にハチに刺された」とか「森林の宿泊施設で刺された」という内容のものをよく見る。


 マラソン中に刺されたというニュースだが、おそらく襲撃したハチたちが住んでいた巣は普段静かで人通りのない場所にあったのではないだろうか。

 そこにマラソンというイベントによって、普段の何十倍もの人が通行することになる。

 なかなか消えない人の気配と騒音――これにより、ハチたちは「いつもと外の様子が違うぞ?」と不審に思うだろう。こうして巣内での緊張感は高まり、「やっぱり敵が来たんだ! 迎撃しよう!」となる。


 森林の宿泊施設で起こる「ハチに刺された事件」でも同じことが言えると思う。

 普段、森林なんて人通りが全然ない。鳥や虫の鳴き声しかしないような場所である。そんなところに突如人間の騒がしい声が聞こえてきたら、ハチも「うるせえ! 何だこいつら!」となるはずだ。


 ニュースを見る限り、刺されているのは大体が森林野外活動で遊びに来ていた子どもである。

 多分、引率の先生なんかが「クマを寄せないように、みんなで歌いながら歩きましょう」とか言ったのだろう。

 森林に住むクマは人間を恐れている。だから、なるべく大きな音を立てて自分たちの存在をアピールしながら森林を歩けば、クマは「あっちに人間がいるから避けよう」と考える。山菜取りのおばあさんなんかも、クマ除けのために鈴を身に着けて作業すると聞いた。


 しかし、子どもたちの歌に「ああん?(威圧)」となってしまうのがハチである。


 森林の中にあるハチの巣を見つけるのはかなり難しい。木の葉の陰や、土の中、自然の中にうまく隠されている。巣に気付かぬまま、子どもたちは騒がしく歌いながら接近する。それも、何十人ものグループで。

 こうしてマラソンの件と同じように、ハチが「敵だ、出会え出会え!」となり、何人もの子どもが一気に刺される。


 その刺された人数が多いことでニュース性が上がり、マスコミが「やったぜ、こいつぁスクープだ!」と食いついて報道する――という流れができてしまっているのではないだろうか。


 これらは僕の予想だ。

 でも、近い部分はあると思う。


 僕の自宅にできたハチの巣だが、もしも家の前の道路が大規模イベントのマラソンコースに指定されたら、多分彼らは走者を刺すと思う。

 マラソンコースの指定は慎重に。

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