自宅にできたハチの巣を放置したエッセイ
ゴッドさん
第1話 それを発見した日
それに気付いたのは、ある夏の日のこと。
発見のきっかけは、ハチの死骸をたくさん見るようになったことだ。
スズメバチみたいな毒々しい外見のヤバそうなハチの死骸が、自宅駐輪場周辺によく転がっている。死骸の掃除をする際、「また動き出して僕を刺すんじゃないか」という不安を感じつつも箒で掃く。
自分が住んでいるところは自然に囲まれた田舎で、スズメバチなんて珍しい生物でもなかった。最初、「自宅に死骸が多いのはただの偶然だろう」と呑気に思っていたのだが、それにしても多い。生きている個体も毎日のように見かける。ブンブンと羽音を鳴らして、僕の頭上を飛んでいった。
――まさか、この辺りに巣があるんじゃないか?
そんな状況が続いたことでさすがに違和感を感じ始め、不安が自分の頭の中を過ぎった。
そして、その悪い予感は的中することになる。
「うわ、けっこうでかいな……」
自宅の屋根付き駐輪場。
その屋根の骨組みの、横から見て死角となる部分。
そこに、直径10センチほどのハチの巣が建築されていた。
以前から直径5センチほどの小さな巣は何度も見たことがあるのだが、ここまで大きい巣が自宅に作られているのは初めて見るかもしれない。
誰かが気付きそうで気付かない絶妙な場所。
僕の経験上、ハチはそういうところに巣を作るのが得意だ。僕の家族も誰一人として発見できぬまま放置されていたのだろう。
巣の主はもちろん、あのヤバそうな外見のハチである。
セイヨウミツバチとかニホンミツバチとかならまだ可愛げがあったが、ヤツはどう見てもスズメバチ。黄色と黒のしましま模様。敵に対して自分が毒を持っていることをアピールするための警戒色。強靭そうな顎を備えている。
発見した巣は、幼虫などを育てる六角形の部屋が外に剥き出しになっているタイプだ。外部から巣の状況が丸見えである。
誰が見ても「これはハチの巣だ!」と連想できるタイプかもしれない。駐輪場の屋根にぶら下がっている。
発見した当時、すでに10匹以上のハチが巣を囲んでおり、巣の拡張・幼虫の世話などの業務に勤しんでいた。
さて、彼らをどうしたものか……。
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