第2話 遠き初恋
あれは初恋だった。
実を言うとわたしは、この東二条邸の娘ではない。
わたしの
その事を不憫に思った
ところが程無くして、実の母が
この娘というのが、つまりはわたしってことね?
当時は、まだ5歳。
初めて見た東二条邸は、本当に大きくて、どんなに目を大きく見開いても屋敷の角が見通せない程だった。
「御義父上さまっ、ここ大きい! びっくりしました!」
「ほっほっほっ。
「…………。はいっ!
「ほっほっほっ♪ よい、実によい返事であらしゃりますなぁ。よいよい、実によい」
屋敷内では、沢山の家来がそれぞれの役割を果たしていた。右にも左にも、人の姿が見え隠れしている。前の屋敷では、とても考えられないことだった。
物凄い経済力!
見慣れない光景に、わたしはキョロキョロとしながら歩き、
「なっ、なにをするかッ!!? 無礼者っ! われは、藤原氏が九条基兼の娘であるぞっ!」
「はは! これはまた、威勢がいい娘だなぁ~っ♪」
「これこれ……
「──!!?」
えっ、息子っ?! じゃあ、義兄さまっ!?
「いえいえ、御父上様。これは、
ねっ、
「…………」
とても優しい眼差しと笑顔で、このわたしを東二条邸へ温かく迎え入れてくれた。
わたしは頬を紅色に染め、このたった一瞬で、一目惚れしたのだ。
そしてこれが、わたしと義理の兄との初めての出逢いだった。
◇ ◇ ◇
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