『へいあんっ☆』 ~平安 姫取物語~
みゃも
第1話 咲花姫の事情
時は平安。所は京の都。
「こりゃあ〜えらいこっちゃ、エライことにならはった!」
正三位 権大納言・
そこで女房 (世話役)と世間話に花を咲かせていた北の方(正室)は、息を切らして入って来る
「エライことにならはったでっ!」
「そないにも慌てて、何であらしゃいますの? どないしはりましたのへ?」
「吉報やっ。ええ話が舞い込んで来たのや!」
「は? なんや……
それで、何がありましたのへ?」
「それが、そないに
「──!!? それは誠ですのへ?? それがホンマなら、大変あらしゃいがたいことであらしゃいますなぁ~」
「ホンマや。安心しなはれ。いんや……まだ正式なモノやあらへんからなぁー。此処だけの話にしといたがよろしいやろかぁ?
何せ、あの姫の気性や……。妙な噂がたって、そのあとで破談にでもなりはったら、なにせ格好つかんやろからなぁ〜っ……? よう注意してやらんと、また左大臣さんから笑われてしまうわ」
──ガタン☆!
「──そんなのっ、冗談じゃないっ!!
「「──!!?」」
「ひ……姫さまっ…」
わたしが住まう東二条邸の母屋が急に騒がしくなったので、野次馬心でいそいそと、止める女房の春野を従え来てみれば、
そりゃあ、それではしゃぐのは御父上様の勝手だけれど。そんな大事なことを相談もなく決められては堪らないものっ!
そう思うわたしの隣で、1つ年上の女房 (世話役)の春野が申し訳なさそうな表情を
そんな中、御父上様は明らかに動揺した様子で口を開いてきた。
「さ、
「……では、お聞きしますけれど。その話、どういう経緯でお決まりになられたのでしょう?」
「それは、アレやっ! ついこの前、
「…………(や、やっぱりそれかぁ…)」
わたしは、思わず頭を抱え込む。
実はあの日、わたしは体調が優れないという理由で、白河邸には行かなかった。というのも、本当のところ体調不良というのは真っ赤な大嘘で。わたしは単に和歌が大の苦手だったから、参加したくなかったのだ。
ところが、それでも
だって春野は、わたしが思うに、紫式部や清少納言にも通じるほどの和歌の名手だったから。
なので、
「もう間もなく12歳にもならはりますのに、これまで恋文の1つも書こうとせなんだ姫が、あのように見事な和歌を……。わしはもう、それだけで嬉しゅうて嬉しゅうて」
「…………」
はぁ、よく言うよぉ~っ……。わたしが書いた和歌を詠み聴かせることで、その場に居合わせた公卿の誰かと恋文のやり取りが幸いにも始まって、半ば強引に
まあね、
何にせよ。わたしとしては、
「
ですから、その御話はお断りくださいませっ」
「「──!!?」」
「なに言うてはりますのや? これまで都中の公卿から届いた恋文に、1度たりとて返したことあらしまへんやろ??」
「ぅ……」
そう、問題はそこなんだよねぇ~っ……。
だってさ、その方と恋文を交わそうにも、わたしが好きになった『愛しの君』ってのが……。
「御父上様。只今、内裏より戻りましてございます」
「おお、おお! これは
「──!!」
優しく上品なお香の薫りと共に、わたしの義理の兄である、従四位下・右近衛中将 九条基近の兄様が
相変わらずの端麗な顔立ちに、わたしは頬をポッと紅色に染め、慌てて
──そう、わたしが恋をしたっていう相手は、『義理の兄』──
といっても……まだ、片想いなんだけどね?
◇ ◇ ◇
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