第16話
ある古墓の話。中国地方の山奥に遠い親戚がいます。
今は、快適な道路がつき辿り着くのに苦労はない様ですが、
嘗ては、谷の底を狭い道が一本だけあるような不便で辺鄙な場所だった
ようです。馬が一頭通る程の幅しかなかったそうです。
しかし、当家の家屋敷は物凄く、敷地だけでも軽く千坪を超え
百町近い田を所有する大地主でした。母屋の鴨居には、藩主
に貸したお金の返済の代わりにもらったという金属の釘隠が打ちつけてあり
回り廊下は所謂鴬張りで、蔵も何棟も並び、大名時計が二つ三つ置い
てあったり、日本画の巨匠の額が部屋を取り囲み、京都から呼び寄せた
庭師の手になるという太鼓橋のある日本庭園など、随分と豪華でした。
以前は茶室もあったそうですが、私が訪れた時にはもうありませんでした。
庭はそのまま敷地内の裏山に続いて、さらに西側には広大な墓所が
あります。何基もの大きな先祖代々の墓が、並んでいます。
ここの主人は余所からの養子さんで、もう故人なのですが面白いお話を伺った事
があります。以前、県の文化財部門の方から裏山にある古墓を研究させてもらい
たいとの依頼があったそうです。古墓の事を「古墳」と言っていたようです。何でも
一番最初に調査したい物だと言われたとか。
しかし主人は頑なに断ったそうで、その訳を聞くと、まだここの養子になるより前の
子供時代に、いたずらで他の悪ガキらと、この「古墳」を掘って遊んだ事があり、その
時、急に煙が立ち上って来たそうで、絶対あそこはダメだからと言って
おられました。
当時の当主だったこの養子さんは、近所のお寺の子でした。
後でこの裏山にも登りましたが、平べったい大きな石が一基あって、その前に花が
さらにそこから零れ落ちた元々墓の一部だったらしい石片のそばにも花が供えてありました。一緒に行った従弟に写真を撮ってもらいましたが、暗がりの中、私の下半身がぼうっと
半ば消えてるように写っていて、面白がった事を覚えています。
真面目な実話怪談…あまりに多いけれど @y5yk
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