第13話

知人の話です。祖父の友人で、家ぐるみで母とも親しくしていたご一家が同じ市内に

あります。もう、古い人達は皆亡くなり、子供の世代や孫が住んでいるだけで、自分と

も、付き合いはほとんどありませんが、子供の頃から若かった頃までよくこちらにお邪

魔していました。

少し、市街地からは離れた郊外に家があり、こちらの小父さんと小母さんご夫婦はいつ

も決まったタクシー会社のハイヤーを使って街に出入りしていました。

このタクシー会社にとっては、もう何十年もの馴染み客さんでした。


有る年、とうとうここの小父さんが亡くなりました。病院を2回転院した後で80代でした。私は最初の病院にはお見舞いに行きましたが、その後は会えませんでした。


奥さんであるここの小母さんが、亡くなってからタクシーで自宅に戻り、料金を払って

車から降りた時、タクシーの運転手さんが不思議そうに小母さんに聞いたそうです。

「あれ?ご主人は降りないんですか」と、確かに乗せていたと言ったんだそうです。

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