第14話

こちらは、とてもいいお話です。以前住んでいた近くのお店のエピソードです。

前に書いた、石鎚山の行者さんの家の近所で、昔ながらの日本家屋でタバコや

切手、宅配便の取次ぎなどの商売をしておられました。通りに面した店の前には

郵便ポストもあり、また自動販売機もあるなど、よくある感じの平屋の店舗でした。

今は、大規模な道路拡張工事の為、既に取り壊されてしまいましたが。


戦時中の事です。この家の息子さんは出征中でした。実は、本当の親子では

なかったのですが、一人家で待つ小母さんとは、実の母子以上に仲の良い評判の

親子でした。


そんな中ある日、玄関先に兵隊に出ていた息子の元気そうな姿が見えました。

小母さんは喜んで、まあお上がりよく無事で…等と話しかけましたが、何故か返事が

ありません。

不思議に思って庭先に出てみると、そこには植えた覚えもない、美しい見事な大輪の

花が一本咲いていたのだそうです。

何の花かは分かりませんが、豪華できれいな花だったと言います。そもそも、戦時中に

その様なものを植える余裕も無いはずですし、近所でも皆不思議がったとの事でした。


その後、息子さんが帰還したという話は耳にしていません。




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