第6話

平成に入ってからの地元でのエピソードです。

たまたま、図書館で出会った市の自由詩俳句サークルの婦人の

面白い体験です。


ある時彼女は、隣接する町の大きな川のそばの道を歩いていたそうです。

すると、そこに上流から煌びやかに飾り立てられた舟が一艘下ってきて

なんとなく付いて行きたくなって、そのままフラフラと川縁へどんどん近づいて

しまったのだといいます。

自分でも、何でかなあという感じで、夢の中のように無意識でその小舟を

追っていました。


小舟は、精霊舟でした…。もうちょっとで川の中に踏み込むかという瞬間、誰か

が、大声を上げて彼女の襟首を掴み、そのまますぐそばの山の中腹にある

寺への石段に引きずり上げました。


「あんたね、このまま連れてかれようとしてるんだよ!しっかりしなさい!」と

怒鳴られても、まだ夢うつつだったそうです。

そのまま、本堂へ行って気が付くと、顔見知りの密教僧でした。

自分の息子が通っていた仏教系の高校の先生でもあった男性で、偶然通り掛かった

折り、この婦人の危機を救ってくれたという訳です。


このお寺では、祈祷をして下さることで有名です。かく言う筆者も何度かお世話になった

ことがありました。亡母が、古くからの友人に電話で「あんたの娘(私です)がいつまでも

結婚しないのはね、先祖の武士が可愛くて手放したくないと思ってるからだって」と言われて誰がそんなことを?と聞くと、友人の話では、近所のうどん屋のおばさんの霊能者がそう

いうお告げをしたんだと。私はバカバカしいなと聞き流したのですが、母には随分と気に

なったらしく、人伝てにこの寺院のことを知り、祈祷をしてもらうことになってしまいました。

 

そもそも正座も大変ですが、それ以上に一種独特の密教寺院の雰囲気に圧倒でした…。

長い祈祷をして頂いた後、ご住職のお話では、私には何もその様な霊障などは無く、気に

することはありませんということでした。

ちょっと一安心でしたが、気になって「なぜ、そういう事を言ったりされるんでしょうか?」と伺うと、ご住職は、そのうどん屋の人には確かに何らかの低級霊が憑いていて、時々は当てたり、力も持ってるので信じる人もいるんだと思いますが、所詮レベルは低いので不安を煽ったりします。大丈夫です。とのお言葉でした。因みに、真実憑依されてる人の場合は

せっかくの有難いご祈祷のあいだ中、爆睡するとのことでした。本人は無自覚なのに、お経等を止めると、すぐ目を覚まし、始めるとまたまた爆睡なんだそうで、自分は足が痺れて我慢してたので、寝れるなどとは想像も付きませんでした。「こないだも、寝た方がいますよ」と

普通にお話されていたのが印象的でした。


ちなみに、当時自分は写真等で写っていないはずの人物が見えてしまったりもしていたのですが、これにはご住職は「御真言を唱えなさい」というアドバイスを下さいました。


ずっと前学生の頃、乃木将軍の大きな写真を机の前にバ~ンと貼って見ていると、背景に

ちょんまげの人々が周りを囲むように大勢写り込んでいるのが見えてきて、ご先祖さんなのかな…等と思ったりしたことがありましたが、卒業後にも、例えば高杉晋作の墓所のある

東行庵のパンフレットに写る、初代庵主で彼の愛人、おうのさんのお墓の土台の方に

尼さんの顔が浮き出ているように見えたりしていました。

幸い、今はそういう感覚は消えたようです。


さて、先程のお寺で何事も無いと言って頂いても、まだ母は安心できず、もう1か所自宅から

大きな一級河川を遡った所より、さらに支流の川の奥に鎮座する祈祷所に行きました。

今度は神社で、珍しい神道系のご祈祷施設です。

ここでは、大太鼓を打ち鳴らしてのご祈祷です。内部は寺院のようで板の間の本堂のような

場所でした。男性の神職さんが頻りに祝詞を唱え続け、力強い太鼓の音が部屋中に響き渡ります。

ややあって、霊能者でもある神主さんがこちらに向き直り、お話をされました。

やはりセーフでした。大丈夫ですよとの事。寺院と神社で同じ判定って面白いなって思いましたが。ここでも本当に憑りつかれてたりする場合の特徴を伺いました。


そういう人は、神主さんが太鼓を叩いている間、御堂の中を四つん這いになってグルグルと

獣のように走り回るんだそうです。ホンマかいな?と思わず笑ってしまいましたが、神主さんは顔色も変えず、こないだもここで走られましたよと日常茶飯事的なお答えです。お寺の時と同じく、太鼓を止めると、何も無かったように目を覚ましてこれまた当の本人には自覚も無いんだそうです。








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