第4話

当時のこの予備校では、一般人の方も通って来られてました。

既卒生のみならず、中高年者で様々な事由で進学できなかったといった

事情のある皆さんで、これからその中のお一人のお話をします。


中卒で、とある島の幼稚園で働く五十代位の女性が、はるばる通って

来られていました。聞けば、若い頃には家の事情で進学を断念されて

いたそうです。勤め先の幼稚園は寺院の経営で、敷地には墓地も沢山

あるとの事でした。

台風か何かで、この辺りを含めかなり甚大な被害が出たという年のことです。

管理している墓所の内、何年も連絡もないまま半ば無縁のようになったお墓

があり、園長兼住職さんも長年困り果てておられたそうで、この時の災害で

さらに傷んで、もはや傾きそうになっている状態のこのお墓に関しては、もともと

遺族との連絡も出来ず、どうすることも出来ぬまま、修理の許可を求めることも

かなわない訳です。


すると…長い間全くの音信不通であったこの墓の関係者が、突然初めてこの寺

へやって来たと言います。あまりのタイミングに驚いたのですが、聞けば夢の

中で自分の家の墓石が無茶無茶になった姿を見たんだという事でした。

夢告というものが現実にありうる事を示している実話でした。

きちんと修理して、この家族はまた去って行ったとのことでした。


なお、こちらのお話をされた女性は、その後自力で大検に合格され、国立大学に

進学を果たされています。

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