第2話

同じ予備校での話。随分遠くから、青年のくせに黒塗りの立派な車で通ってくる生徒がいた。彼は、ハイカラさんだが、山奥の辺鄙な豪雪エリアからはるばる通学していたのだった。

身体が弱く、いつも青白くて肩で息をするようにしていたので、ちょっと心配したものだ。

彼の話をしてみたい。奥地の地方では、まだ所謂、拝み所というか老婆の霊能者が日常の

住民の相談を受けたりしていて、彼の家でもある困りごとで依頼をしたという。

彼には姉がいて、原因の分からない体調不良のため寝込んでしまった。なかなか良くならず、相談に行くと、この老婆の言うには一族の墓所に誰も知らない(1人の例外を除いて)

人間が埋葬されているのが原因だと…。すると、寝込んでいた件の姉が皆の前でうわ言を

言った。それは、知らない女性の名だった。自分は●●子です、と言う様な感じだったという。

家族は皆きょとんとしていたが、1人祖父のみはそれを聞いて震えだしたという。

事実は、彼が祖母と結婚する前、付き合っていて、ほぼ妻と言えるような女性がいたという。

若くにして亡くなり、密かに一族代々の墓地の片隅に埋葬していたのだが、その当時からも

祖母等に遠慮して一切話をしていなかったと告白したという。

自分の孫娘の口を借りて何十年もたって語りだしたという訳だった。早速、拝み所でねんごろな供養をしてもらい姉も回復し、この薄幸な女性の遺骨も分けて無事日常が取り戻せた

そうで、自分も安心できた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る