だらだら怪談

VLP

「愛犬」

その日は朝から天気が良く、快晴の秋空でした。

そんなに天気が良いのに私は風邪をひいてしまい、小学校をお休みして寝込んでいました。


うちは両親が共働きで、母はパートに出てましたが、その日は私が風邪をひいた事もあり、母は家の一階にいました。


私は二階の寝室で一人で寝ていましたが、なんとなく物音で起きてしまいました。


その物音は母が一階で掃除機をかける音でした。なにぶん昔なので、今の様な物静かな掃除機でなく、ぶぉーぶぉーと音の大きな掃除機でした。


ああ、掃除機の音かー・・と思い、天井をぼーっと見つめていると、変な違和感を感じました。




何故か私は息をしていませんでした。




怖いとも大変だとも思いませんでした。あれ?息してないなぁー・・・てか息するってどんなんだったけ??と妙に冷静というか・・自分でもよくわ からない状態でした。


むしろこのままどこまで息しないで居れるだろうか?と、自分の中でちょっとこの状況を面白いとも思っていました。


多分5~6分は息をしていなかったと思います。とくに苦しくもなく、頭も風邪をひいているのに妙にクリア、ひょっとしてこのままずっと息しなくてもいいのかな?とも思い始めていました。




いや、ダメだ。




そう思い、私は息をしようとしましたが・・・やり方がよくわかりません。


こうかな?いや・・こうか??っと口をパクパクしてたと思います。が、どうやって息を吸っていたかがわかりません。


ひとしきり一人で悩んだ挙句、私の結論は・・・




あ、一階に母がいる 、母にやり方を聞こう!と思い至りました。

そうと決まれば起き上がり、ベットから降りると・・・・




私がベットに寝ていました。




私は起きてベットの横に立ってます。でも寝てる私がベットにいました。




なんだこりゃ???




理解出来ませんでした。どうして私が私を見ているのか?そもそもどうしてこうなったのか?まったくわかりません。




だめだ、今すぐ母の所へ行こう。




そう思い、一階に行くため部屋のドアまで行こうとすると、カーテンのかかった窓の方から声がしました。




「こっちにおいで」




今思うと、アレは声じゃなかったかもしれません。でも、呼ばれました。




え?そっち?私が窓の方の見た・・っと思ったら、




私は外にいました。正確には部屋の窓の向こう、そこには狭くて小さなベランダがあるのですがそのベランダの柵の向こう側、正確には柵を超えた先の空中に浮いていました。




え?あれ?・・・わあ!空飛んでる!!




そう思った瞬間!私はなんだか凄い力で空の方に引っ張られる感じがしました。




え?やだ!そっちはやだ!




本能的に私はそう思い、ベランダのヘリに力いっぱいしがみついたと覚えてます。

必死でしがみついていると




ワンワンワンワンワンワン!!!




外で飼っていた愛犬が私の方を見上げて吠えました。




すると今まで凄い力で引っ張られていたのがスッーっと無くなり、そのままストンっと私は庭に立ち降りました。




ああ。愛犬が助けてくれたんだ!




私はすぐに愛犬に近づき、頭のなでてありがとうと言いました。




そこまでは覚えていますが、ここで記憶は途切れます。




次に私が目を覚ますと、外は暗くなっていて、なぜか一階の居間でした。


あれ?なんで?と思うと私が起きたことに気がついた母が言いました。




「あ!起きた!あんた犬小屋で寝てたんだよ!なんであんな所に居たの?!」




後で聞いた話ですが、お昼頃になり、母が私の様子 を見に二階に上がると姿がなく、あれ?っと思ったら外で愛犬が吠えてたそうです。


うちの愛犬は年寄り犬で滅多に吠える事が無く、その愛犬が吠えているので、変だなぁ?っと思い見に行くと、私が犬小屋を占領して寝ていたそうです。そして、そんな私に愛犬は何でも無かったかのように寄り添っていたそうです。

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