高齢運転者による巻き込み事故

 明滅するヘッドライトは剥き出しで歪曲したワイパーは降り続ける小雨を払い続けている。

 そのフロントガラスは轢かれた俺の血で紅く染まっていた。衝撃で湾曲したワイパーは意味も無く動き続けている。降り続く雨、灰色の曇、煙を吐き続ける工場群。それは毎朝見慣れた景色。


信号は確かに……青を示していた。


耳をつんざくブレーキ音。黒い自動車はコンクリートの壁に俺を容易に叩きつけた。痛みは……無い。


 というか感覚がまるで無い。音も既に聞こえなくなった。コンクリートの壁面と車体に挟まれた俺の胴体からは内臓が溢れてい……る。


 高齢運転者による巻き込み事故だった。


 製造工場勤務の垣沢漠土かきざわ ばくど22歳。


 フレームが歪み、露わになった運転席。老婆が俺に救いを求める様に手を伸ばしていた。助けて欲しいの俺の方……なんだけど?

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