真紅強国、ロード・ロマニオン

真紅強国、ロード・ロマニオン

 色国軍しきこくぐんきっての強国、紅の強国ロード・ロマニオン


 現在はベルセルスス・クラウディウスⅦ世が治めるドワーフの国。

 碧の豊国ベインレルルクの騒動の引き金となった豊国の第二王女、ラヴィリア・ベインレルルクの元婚約相手がいる国だ。


 緑豊かな豊国とは対照的な、鉄と岩、砂の国。

 世界中の武器のおよそ七割はこの国で作られ、歴史に刻まれる武器職人の九割は、この国から生まれ出でた。

 三八の戦争と六の大戦。二度の内乱という戦火を潜り抜け、富国強兵の国を作り上げた。

 またの名を、闘争の国インペリオン


『さぁ、始まりました! ここ、紅の闘技場クリムゾン・コロシアムにて本日開催されますグラディエータ・トーナメント! 世界各国から集まった三二人の実力者達が、今回の優勝賞品であるを巡って激戦を繰り広げます!』


 嘘か真実まことか、優勝賞品は伝説の産物。

 一秒ごとに異なる色を反射して輝く黄金の欠片に、世界各国の猛者が集う。


 ある者は己が願望のために。

 ある者は多額の報酬を約束されたがために。

 ある者は母国を救うために。

 各々が各々の願望を胸に、三二人の闘士が入場する。


 各国の英雄、英傑、騎士、戦士、暗殺者など、実力者ばかりが揃う中、一人、皇子の肩書を持つ青年がいた。


『皆様、中央を歩く戦士にご注目下さい! 黄金の帝国テーラ・アル・ジパング第一皇子にして、最近起こった豊国の騒動を収めた英雄! 現在、白銀の王国キャメロニア戦闘部隊に席を置く、白銀の英雄! 邦牙ほうがぁぁぁっ!!! れぇぇぇんっっっ!!!』


 観客席がわっ、と湧く。

 当の本人はどうしたらいいのかわからない様子だったが、ふと、友人に言われた事を思い出して高々と拳を突き上げてみせる。

 更に観客席の人々が湧く中で、ビップ席に座る女性――彼の姉である邦牙らんが、企んだような微笑を湛えていた。


「さぁ、蓮。ベインレルルクを倒したあなたの力……見せて貰いましょうか。少しは私に、近付けたのかしらね」


 どうしてこのようになったのか。

 話は、およそ一週間前まで遡る。

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