きたる日

 純はその日、眠りにつけなかった。


「やくそくをわすれちゃうなんて、おとうさんはボクなんかどうでもいいんだ」


 ひと月前の雑誌の特集の切り抜きを見つめる。『アクションヒーロー百人ひゃくにん育成計画いくせいけいかく』とルビ付きで派手派手しい文字だった。描かれているのは、爆発に飛び散る怪人。中央にこちらを指し示す赤いマスクのヒーローだ。だが純は――。


「せかいをすくうとか本当どうでもいい。モンスターをたおしまくって、友だちにじまんしたかった」


 TVのニュースが聴こえてくる。


「小学生の自殺が増えています。ゲーム通信での仲間はずれが問題視されてます」


 しんだら、こうかいしてくれるかな。だれか、ボクのきもち、わかってくれるかな?


 窓辺からのぞく影が小さく首をふる。


 ――純、いけない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る